イチ流に触れてBACK NUMBER
日本での開幕戦でスタメンが濃厚。
イチローの「その後」が楽しみだ。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2018/12/02 11:30
球団会長付き特別補佐の立場ながらシーズン中もトレーニングを欠かさなかったイチロー。来季の動向はいかに……。
日本開幕戦に出場し、その後は?
シアトル・マリナーズにとってイチローは言うまでもなく、球団の象徴である。将来的に確実視されている野球殿堂入りも、マリナーズの選手として果たすことは間違いない。その功労者に対するはなむけの道、それが日本開幕戦と感じている者は少なくない。
更には海外開催となる日本開幕戦では特別措置が採られ、ベンチ入り枠が28人に増える。その恩恵とする者も多い。シアトルで再開されるレッドソックスとの開幕戦からは通常の25人枠に戻ることを考えれば、風評がひとり歩きするのも仕方がないことだ。ディポトGMでさえも「日本開幕戦後のことは今の時点ではわからない」と言った。
だが彼は、そのあとにこの言葉を付け加えた。
「後のことはオープン・マインドで考えている」
すでに体は春キャンプ前のよう。
最終的な意志決定は自分の考えだけでなく、他者との関わりや意見も取り入れ、柔軟に考えて行くと言うGMの公の場での発言。もちろん、その時点でのチーム状況も大きく影響してくるであろう。
今季はわずか1カ月、出場15試合、47打席の機会しか得られなかったイチローだが、チーム事情は今季と来季では大きく違ってくる。
マリナーズはこのオフ、抜本的なチーム改革に取り組んでいる。今季11勝を挙げた30歳左腕のジェームス・パックストンをヤンキースにトレードで放出。交換要員は若手有望株投手2人と外野手1人だった。
シーズン当初、イチローと控え外野手の座を争ったギレルモ・ヘリディアはレイズへとトレードされ、見返りとして獲得したマレックス・スミスは「1番・中堅」としての期待があるものの、25歳と若く未知数の部分も多い。
主砲カノとともに57セーブを挙げ、最優秀救援投手に輝いた24歳のエドウイン・ディアスもトレードで放出する準備を進めている。数年先を見据えるチーム作りへの移行は“先生役のベテラン”が必要となってくる。ディポトGMは先の会議の場で言った。
「イチローが日本へ帰る前にセーフコフィールドで会って話をした。彼はいつものように練習していたよ。体はもうまるで、春キャンプが始まる前のようだった」
先のことは誰にも分からない。大切なことは今と向き合い、すべき準備を怠らないことだ。そんなイチローにとっては当たり前の日々を、ディポトGMはこの1年間初めて自分の目で見てきた。彼の心をオープンマインドにさせたのは、間違いなくイチロー自身の日々の鍛錬であり、常に真摯に野球と向き合う姿勢だ。
2019年シーズン。イチローの周りでどんなことが起こるのか。楽しみにしたい。