猛牛のささやきBACK NUMBER
後藤駿太が二軍で長く過ごした1年。
「まだ戦力外通告は受けていない」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/11/16 08:00
後藤駿太にとってプロ8年目となる2018年シーズンは一軍出場33試合。ほとんどの期間を二軍で過ごした。
守備にかける強烈な思い。
今年は、後藤の中で複雑な思いがめぐっていたのだろうと想像できる。
後藤は入団当初から守備力を高く評価され、自身も外野守備にこだわりとプライドを持っていた。俊足、強肩というだけでなく、その場面での投手の特徴やカウントを踏まえ、打者のボールの見逃し方などをつぶさに観察し、打球を予測して守備位置を変えたり、他の外野陣に指示を出すなど判断力や統率力も磨いてきた。
「守備がうまいとか簡単だとか、『守備なんてできるからいいや』なんて、僕は今まで1秒も思ったことない。守備固めで出る時の緊張感ってものすごいものがあるんです。一番キツイ場面を守っているわけですから。
スタメンで出れば、万が一エラーしても取り戻す機会はあるけど、守備固めは、1球飛んでくるかこないかの場面で守っている。それを取れるか取れないかで、ピッチャーの生活も変わってくる。それを経験していたら、守備を疎かになんて絶対できません」
そんな風に語る後藤にとって、今年、内野手だった宗佑磨が外野手に転向してすぐに起用されたり、捕手登録のルーキー・西村凌が外野で起用されるといった状況に、心穏やかではいられなかったのではないか。
ライバルと自分を比べてばかりいた。
今春のキャンプ中、後藤はインフルエンザにかかって出遅れてしまい、その間に宗が外野手に転向した。
「『駿太と宗の勝負だ』みたいな記事も出ていましたし、焦りたくなくても焦ってしまった。繊細すぎましたね。周りを見すぎていました。例えば一軍にいる宗や小田(裕也)さんや西村がどれだけ打っているかを見て、じゃあこれだけ打てば自分は出れる、というふうに考えてしまっていました。
でもそうじゃないなと気づきました。周りが3割打とうが2割だろうが、安心もしないし、不安にもならない。自分が思っているところまでいけたら絶対活躍できる、というふうに考えようと思っています。
内野から外野に誰がきたとか、もうどうでもいいんです。最近も、山足(達也)が外野をやるという記事が出ましたけど、今の僕には、まったくどうでもいい話。今の僕は、自分がどこまでいけるかということに挑戦しようとしている。人と戦わなくちゃ伸びない人もいると思いますが、僕は、自分と戦わなきゃダメ。自分に勝たないと、その先はない。なりたい自分に、どれだけ近づけるか。周りは見ずに、上だけを見て、パーッと突き抜けていくイメージです」