猛牛のささやきBACK NUMBER
後藤駿太が二軍で長く過ごした1年。
「まだ戦力外通告は受けていない」
posted2018/11/16 08:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
「もったいない1年でした」
オリックスの後藤駿太は、プロ8年目をそう振り返った。淡々とした口調の中に悔しさがにじむ。
後藤は高卒1年目の2011年に開幕戦で先発出場を果たし、その年30試合に出場。2013年から昨年までは5年連続で100試合以上に出場していた。
ただレギュラー獲得まであと一歩、という状況からなかなか抜け出せずにいた。今年は飛躍を目指し、登録名を“駿太”から“後藤駿太”に変えて臨んだが、一軍出場は33試合に終わり、ほとんどの期間を二軍で過ごした。
だが、どこかでそれを受け入れてしまっている自分もいた、と振り返る。昨年までは、一軍にいても相手が左投手の時はあまり出場機会がなく、守備固めのみの試合も多かった。「上であまり試合に出られないんだったら、二軍にいて試合に出た方がいいんじゃないか」と考えることがあったと言う。
「今年はそれが現実になってしまった。ファーム生活の中、心のどこかで、下で頑張ることも自分のためになる、二軍にいてもいいって思ってしまっている自分もいたんです。そこが一番難しかった」
二軍でわかった一軍にいる大切さ。
這い上がるための火がつかないまま1シーズンを終えて、残ったのは後悔だった。
「今年の感想を聞かれても何もない。サーッと終わってしまった。しょーもない1年にしてしまった。やっぱり一軍にいたいなと思ったし、一軍で試合に出ることがどれだけすごいことか、どれだけ価値のあることかがわかった。一軍に残るためには何でもしなくちゃいけない、どんなかたちでも残らなきゃいけないと今は思っています。
それは二軍にいなければわからなかったことだから、今年はいい経験になった。いい経験なんて言っていられる年齢じゃないですけど、まだ戦力外通告は受けていないので、来年もあるので、もう1回初めて一軍に定着できた年のように、毎日毎日、与えられたことをしっかりやるということを徹底していきたいと思います」