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ファンジオ伝説に並ぶ5度目戴冠。
成熟のハミルトンがF1で学んだこと。
posted2018/11/06 17:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
REUTERS/AFLO
ある者は言う――F1は最も速いマシンを手にした者が勝つ。
だが、勝者は言う――F1はマシンを最も速く走らせた者が勝つ、と。
2018年のF1世界選手権は、第19戦メキシコGPでドライバーズタイトルが決定した。舞台は昨年と同様メキシコ。
タイトル争いを演じた2人のライバルも昨年同様、メルセデスのルイス・ハミルトンとフェラーリのセバスチャン・ベッテルだった。そしてチャンピオンに輝いたのも、1年前と同じハミルトンだった。
ハミルトンの2連覇という結果だけを見れば、'18年シーズンは昨シーズンと変わりないように見えるが、通算5度目のタイトルとなった今シーズンの戦いは、1年前とは似て非なる激闘だった。
開幕3戦で勝利無しのハミルトン。
ハミルトンは述懐する。
「戦う相手は同じだったけど、彼らは1年前よりもはるかに強力だった。だから、僕たちもフェラーリを倒すために、一段階ハードルを高く設定しなければならなかった」
それが決しておおげさな表現でなかったことは、昨年の覇者であるハミルトンが今シーズンは開幕3戦を終えて未勝利だったことが証明している。
開幕3戦でハミルトンが1勝もできなかったのは、タイトルを逃した'16年以来のこと。メルセデスにとっては、現行のパワーユニットが導入された'14年以降、初めてのことだった。
つまり、今シーズンの序盤に限って言えば、過去4年間最強を誇ってきたメルセデスはすでにその座から陥落しており、ディフェンディングチャンピオンであるハミルトンは挑戦者だった。今シーズン序盤、最強のマシンを操っていたのは、フェラーリのベッテルだった。
逆にこの状況が、ハミルトンの闘志に火をつけた。