第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
“古豪”復活を目指す筑波大。
文武両道プロジェクト8年目の足跡。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byKiichi Matsumoto
posted2018/11/08 11:00
文武両道を掲げ、大学の授業後に全体練習が始まることも。
学生に考えさせてやり抜く。
今、一番欲しいものは何だろうか。
「食堂です。選手全員が入れる食堂。あそこでの会話が大事なので」
現在は大家さんの好意で提供していただいている寮に学生たちは分かれて住んでいる。基本は自炊。シューズなどの提供もない。実績のないチームゆえスカウティングにも苦労すると話すが、監督の表情は決して暗くない。復活への道筋が見えてきているのだろう。
「うちは基本、学生に考えさせて、判断させて、決めたらそれをやり抜くという方針で練習をしています。選手にはより上の設定でやりたいという意欲があるし、タイムが伸びているのも確か。競技力だけでなく、人間力も磨いて箱根に行く。光はけっこう近くに見えているんですけどね」
前々回の箱根駅伝予選会は24位、前回は19位、そして今年は17位──。復活プロジェクトが当初に掲げていた「5年以内に本大会出場、10年以内に優勝」の目標は見込みが甘かったと言うしかないが、8年目の成長の足跡は確かに残した。
「来年の予選会はちょうど自分の誕生日なんです」
そう言って笑う監督には、誕生日と箱根駅伝出場の両方を祝い、二重の喜びに包まれる近未来が見えているようだ。
「昔箱根を走った先輩方もそうですし、この20年間で努力したけど走れなかったOBの方々が熱心に応援してくれています。彼らのためにも早く良い報告がしたい。もちろん、大家さんにもね(笑)」