第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
“古豪”復活を目指す筑波大。
文武両道プロジェクト8年目の足跡。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byKiichi Matsumoto
posted2018/11/08 11:00
文武両道を掲げ、大学の授業後に全体練習が始まることも。
入部希望者は誰でも拒まない。
取材に訪れたこの日も、全体練習が始まったのはもう日が暮れようかという時間からだった。部員自らウッドチップを撒いたというクロカンコースに集団のかげが伸びていく。マネージャーはいない。監督自らがタイムを計り、部員は走ることに専念する。集団の中でのスピードにややばらつきは見られるが、個々の走りは悪くない。監督が言うように、実力は着実に伸びているのだろう。
筑波大では、陸上競技部はあくまでも課外活動の位置づけだ。入部を希望するものは誰であっても拒まない。「入部時は女子選手より遅かった選手が5000mで1分以上タイムを縮めた例もある」という。
チームの中心は現2年生。昨年、陸上競技経験のある(5000m14分台の記録を持つ)選手が9人も入部し、その中には駅伝の名門である佐久長聖高でキャプテンを務めた相馬崇史の姿もあった。
「彼は将来、マラソンがやりたいということで一般入試を経て筑波に入ってくれました。やはり存在は大きいです。ストイックにやっていますし、周りにも良い影響を与えてくれている。本来なら前回、彼が筑波のユニフォームを着て箱根を走ってくれる予定だったんだけど、直前のケガでね……。今年も関東学生連合チームに選ばれたら、5区を走らせると面白いですよ。幻の区間賞を狙えと言っていたくらい力はあります」
箱根のレベルが凄く上がっている。
弘山自身もかつては筑波大の主力だった。選手時代は4度箱根駅伝を走り、区間2位も獲っている。今の選手に足りないと思うことはどんなことだろう。
「学業が忙しいからできないわけじゃないと思うんです。ただ、箱根のレベルが以前よりもずっと上がってますからね。今はもう実業団並み。練習も自ずとそのレベルが求められてきます。本当は選手一人ひとりの個性や特徴にあわせた練習を処方していきたいんだけど、どうしても今は選手層を厚くするために学年も関係なく強化せざるを得ない。そこが指導者としてのジレンマです」
弘山が監督に就任して早3年。環境は徐々にだが変化してきている。足りない資金を補うため、クラウドファンディングを利用して広く活動資金の支援を求めた。週3回ではあるが、選手への夕食の提供が可能になった。研究室を利用して運動生理学的なデータをとり、学生自らがそれを研究テーマとして取り組むなど、筑波らしい試みも始まっている。