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世界を知る女子バレー荒木絵里香が
コートで見せる大黒柱としての役割。
posted2018/10/17 10:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
AFLO
荒木絵里香(トヨタ車体クインシーズ)のサーブは何かを起こす。
現在開催中のバレーボール女子の世界選手権では、そんな場面が毎試合のように見られている。
その最たるシーンが、2次ラウンド最終日の10月11日に行われたブラジル戦、第1セットだった。
3次ラウンド進出を争うブラジルとの直接対決で、日本は1セットを取れば3次ラウンド進出が決まるという有利な条件だった。
ところが今大会不調だったブラジルが、この日は1セットも落とさず勝つという明確な目標のもと、高い集中力で攻守ともに隙のないバレーを展開。世代交代したとは言え、2008年北京、2012年ロンドン五輪で連覇を果たした元女王に、日本はじりじりとリードを広げられた。
元女王の焦りを生んだサーブ。
しかし、18-22の場面でサーブに下がった荒木が流れを変えた。
ブラジルはサーブレシーブが得意ではないフェルナンダ・ロドリゲスを、ガブリエラ・ギマラエスがカバーするシフトを敷いていた。荒木はその2人が、どちらが取るのか迷う場所を狙って揺さぶると、石井優希(久光製薬スプリングス)が立て続けにスパイクを決めて20-22と追い上げる。
さらに、荒木はエンドライン際にノータッチエースを決め、次はネットインボールがコートに落ちて22-22の同点。焦ったブラジルにミスが出て23-22とついに日本が逆転に成功した。最後は新鍋理沙(久光製薬スプリングス)のブロックが決まり、日本は大逆転で第1セットを奪い、3次ラウンドへの切符をつかんだ。
たとえ第1セットを失っても、その後のセットを取り返せば3次ラウンドに進める。しかし荒木にはその考えはなかったと言う。
「私はブラジルの底力を今まで何度となく見てきているから、彼女たちがここで終わるわけがない、という怖さをすごく感じていた。だから何としても1セット目を取りたい、と強く思っていました」