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魔法の言葉でマンCを操るペップ。
天才戦術家に過信があるとすれば。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto press
posted2018/10/07 09:00
『オール・オア・ナッシング』はJリーガーの中でも話題になっているという。ジョゼップ・グアルディオラの影響度はそれほどまでに大きい。
戦術を研ぎ澄ませすぎる傾向が。
最近のペップを見ていると、自らが編み出した戦術を研ぎ澄ませてすべての問題を解決しようと、あまりにも躍起になっているように感じる。
昨シーズンのリバプール戦もそうだったが、アウェーの第1レグをあっさりと落とし、その後の戦いを難しくしてしまう悪しき傾向は、戦術への過信が招いたものかもしれない。
今シーズンのCLは、ホームでのグループステージ初戦でリヨンに敗れる最悪のスタート。続く第2節のホッフェンハイム戦も、開始わずか1分で失点する苦しい展開を強いられ、なんとか逆転でうっちゃったとはいえ、先行きに不安を抱かせている。
この試合でも、ホッフェンハイムの若き戦術家ユリアン・ナーゲルスマンに対抗心を燃やすように、4バックと3バックを駆使しながら局面打開を図ったペップ。技のデパートよろしく多彩な戦術を繰り出してみせたが、どうにも小手先感が否めなかった。
常に完璧を追い求め、寸暇を惜しんで対戦相手を研究する姿勢には頭が下がる。けれど、戦術に溺れ、頭でっかちになり、いつしか純粋に技と技を競い、力と力でぶつかり合うというフットボールの本質を見失ってはいないだろうか。
「ある種のアロガンスが必要だ」
前述した『オール・オア・ナッシング』の中で、ペップは選手にこう語りかけている。
「マドリーやバルサと我々との唯一の違いは、『勝利への確信』があるかどうかだ。偉大なチームにはある種の“アロガンス”(傲慢さ)が必要なのだ」
ペップその人が、自らが作り上げたチームに、ヨーロッパでもトップレベルの実力者たちを揃えた巨大な戦力に、確信を持つこと──。メッシ抜きでCL制覇を成し遂げ、当代随一の名将としての地位を不動のものとするための、それが第一歩ではないだろうか。