猛牛のささやきBACK NUMBER
オリの心優しき助っ人ディクソン。
「日本の人や文化が好きですから」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/09/20 08:00
7月17日の日本ハム戦では4年ぶりとなる完封勝利を挙げたディクソン。「本当にうれしい」と笑顔を見せていた。
打線の援護に恵まれなくても。
ディクソンは今年に限らず、来日以来、打線の援護に恵まれない印象がある。打線との兼ね合いがよければ、とっくに二桁勝利はクリアしていただろう。また、今年は勝ち投手の権利を持ってマウンドを下りたあとに、リリーフ投手が同点、逆転を許し、ディクソンの勝ちが消えた試合が3試合もあった。
しかしそうした不運にもディクソンは揺らがない。勝った負けたで一喜一憂しないのだ。
登板後のコメントも、自分のピッチングを冷静に振り返るものが多い。例えば6回1失点で敗戦投手になったとしても、負けたからダメというのではなく、よかった部分はよかったと、自分で自分を認める。
今季の前半戦、勝てなかった時期も、「自分の中ではそれほど悪いと思っていなくて、ただ運がなかったと言ったほうが、自分の中では適しているかなと思う。確かに四球で試合を崩してしまったこともあったけど、全体的に見れば悪くはないので、自分を信じて、自分のできることをやっていくだけ」と考えて乗り越えた。
心底嬉しそうだった完封勝利。
そんなディクソンが、心底嬉しそうに笑ったのが、7月17日の北海道日本ハム戦の完封勝利のあとだった。
9回途中で球数は140を超え、2死から連続四球で満塁のピンチを作ったが、決してマウンドを譲らなかった。顔を真っ赤にしながら投げ続け、最後はオズワルド・アルシアをファールフライに打ち取った。もともとは打たせて取るスタイルのディクソンが、この日は三振12個を奪っての完封だった。
試合後は顔を紅潮させたまま、興奮気味に語った。
「自分でも何が起こったかわかりません。今日はまっすぐ、カーブ、チェンジアップ、カットボール、すべてで三振を取れた。どの球種も調子がよかった。今日は味方に多く点数を取ってもらっていたので、その分しっかりとゾーンで勝負できました。
今まではあまり長いイニングを投げさせてもらっていなかったので、試合中は、このまま最後までいかせてもらえるのかな? という気持ちと、今日は大量リードしているので最後までいかせてもらえるだろう、という気持ちが半分半分でした。9回はもうバテてしまって、なかなか思うようには投げられなかったんですが、ただ最後まで投げ切りたいという一心で投げました」