炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ中崎翔太は無事是名馬である。
控え目な守護神の驚異的な安定感。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/09/15 09:00
中崎翔太は謙遜するが、26歳にして100セーブを達成した実績は誇っていいものだ。
毎回のように走者を背負っても。
孤独な戦いを続けられる中崎。
「早く帰ったからといって特別やりたいこともありませんから。誰かとごはんに行っても気を遣うこともありますし」
あっけらかんと笑う豪快さに器の大きさを感じさせる。
それでも勤続疲労はピッチングに影響する。今年は本来の切れがなかなか戻らなかったし、「状態はあまり良くはないですね」と調子を隠そうとはしなかった。現状と向き合いながら、その中で最善を尽くしてきたのだ。
今シーズン登板した59試合中、1回以上を投げたのは56試合。そのうち1人も走者を出さなかったのは14試合しかない。毎回のように走者を背負い、ピンチを招いた。
見守るファンからするとヒヤヒヤさせられたかもしれないが、それでも29個のセーブを積み重ねられたのは、カープの総合力だけが理由ではない。継続し続ける安定感は、特筆に値するのだ。
「僕はひっそり、目立たないで」
中崎はプロ入り後、12試合の先発経験がある。ただリリーフ登板は入団2年目から積み重ねた登板数は297試合にも及ぶ。計315回1/3を投げ、防御率は2.22という数字は驚異的だ。10代のときからどんな役割もこなし、安定感を継続させられている何よりの証しといえるだろう。
広島の3連覇はもう目の前にある。
「僕はひっそり、目立たなくていいです」
いつもそう口にする控えめな守護神だけが、3年連続胴上げ投手となる可能性を持っている。実現すれば、史上2人目となる。
“三冠馬”誕生か。歓喜の締めくくりとともに、中崎は球史に残る名馬となる。