4-3-3への強烈な信念と理論。

　4年ほど前、筆者はサッスオーロ時代のディフランチェスコを取材した。確かそのときもチームが思うような成績を出せない時期だった。

　なぜ4-3-3にこだわるのか、監督にその理由を聞いた。

　少々意地悪な質問だったか、と思ったが、彼はむしろ胸を張って「攻守のあらゆる場面に対応できるオールラウンドな形、それが4-3-3であると自分は信じている」と言った。

「指導者は柔軟でなければ」とも言っていたはずだが、彼にとっての「4-3-3」は頭の中で理論を反芻し、グラウンドで実証することを何度も繰り返して得た信念なのだろうと思った。

　幸いセリエAは代表戦による中断に入った。指揮官が新戦力組合せの最適解を見つけ出す時間はあるはずだ。

　世界的数学者のフィガッリ教授はもちろん指導者ライセンスを持っていない。しかし、教授も敬愛するローマの現指揮官の信念を支持している。

「物理的にグラウンドのすべてをカバーすることはできません。11人がどれほど効率よく動き続けても縦の距離にしてせいぜいグラウンドの前後半分ほどだと思いますが、それでも4-3-3という布陣は非常に理に適っている」

　教授のフィールズ賞受賞の対象となった研究テーマには「偏微分方程式」や「距離空間」といった難解な数学用語が並んでいて、日本語で言われても正直何のことだかさっぱりわからない。教授の専門分野は数多く、「確率論」もその1つだという。

　セリエAで開幕3連勝したのは王者ユーベのみ。

　フィガッリ教授、ユーベがスクデットを逃す確率は？

「……うーん、その答えは出せません。勘弁してください（笑）」