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浅野拓磨が忘れない2つの約束。
本田の魂、ランゲラックとの再会。
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byGetty Images
posted2018/09/05 08:00
シュツットガルト時代にランゲラック(左)と同僚だった浅野拓磨。日本の新エースとして一本立ちできるか。
代表にまた選ばれて会えるように。
オーストラリア代表はロシアW杯で、日本と同じカザンをキャンプ地に選んでいた。ランゲラックは「拓磨に会いたいね」と言っていたが、最終選考でメンバーから外れて願いは実現しなかった。一方の浅野はバックアップメンバーでチームに同行。とうとうロシアの地で2人の道が交わることはなかった。
カザン空港での最後。浅野にランゲラックの「いたずら」を聞くと、ギラギラと磁気を放っていた目が緩み、フッと笑った。「あれ、覚えていますよ」と言って続けた。
「もちろん自分の家じゃないです(笑)。でも、あいつ、すごく良いやつでいっぱい助けられました。ここで会いたかったなぁ~」
23歳の驚速FWと30歳の守護神。ナショナルチームでの未来はまだまだ続く。
「日本代表にもう一度選ばれて、絶対に会えるようにしますよ。そのために1日1日大事にしないと。そのために毎日100%ですね」
浅野はそう言い残してロシアの地を飛び立った。
浅野もランゲラックも代表に復帰。
あれから約2カ月。浅野は広島時代の恩師でもある森保一新監督の初陣のメンバーに入った。ランゲラックもオーストラリア代表復帰を果たした。
2人が在籍した当時のシュツットガルトではシュート練習が週1回だけで、よく居残りのシュート練習につきあったという。ドルトムント在籍時代にレバンドフスキのシュートを止めていたGKに「浅野選手のシュートを全部止めていたのでは」と振ると「まあね」とニヤッと笑った。
だが、勝手知ったる浅野ではないだろう。誰かに餌を与えられた動物はやがて狩りができなくなるが、ジャガーは逆にハンターとして進化し、獲物=ゴールを得た。ロシアでの苦みを忘れず、先駆者の背中から学んだ牙は鋭く、尖った。何しろ「自分は伸びしろしかない」が口癖だ。