月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
平成最後の高校野球、美談と正論。
猛暑、球数を問題提起した東スポ。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/09/03 08:00
金足農・吉田輝星の球数や酷暑問題……。2018年夏の甲子園ほど、メディアの見識を問われた大会はなかっただろう。
「もう投げれない」の真意は。
さて、決勝の舞台で金足農・吉田輝星は「もう投げられない」と言って降板した。
朝日新聞(8月22日付)は《「オレ、もう投げられない」。今夏、一人で投げ続けた金足農の吉田輝星が、マウンドに励ましにきた二塁手の菅原天空に言った。五回、大阪桐蔭の猛攻を受けた時だ。「あんな弱気な輝星は初めてだった」と菅原天。》と一面で報じた。
見出しは「金足農 絆と涙と」。しかし「投げられない」理由は弱気だからではなく、連投の疲れではなかったのか?
主催の新聞社がこのように絆と涙でまとめあげてしまうと、ますます「球数制限したら?」というツッコミを含む議論になるだろう。でもそうなると選手層が薄い公立校はさらに苦戦する。
報知でも日程改善を求める声が。
このジレンマに対してまずできることは何か? 私は次のコラムが最も納得した。スポーツ報知の「Gペン」だ。
《高野連には改善を求めたい。大会日程が過密すぎる。輝星君は疲労が蓄積し、左股関節痛も発症する中、20日の準決勝で134球を投じていた。今後、準決勝と決勝は連戦ではなく中2日…いや中1日でもいい。間隔を空けてあげられないだろうか。参加全チームから勝ち上がった2校に、万全の状態で決勝を争ってほしいんだ。選手本人は「行けます」と言うに決まっているし、監督さんもそうなったら行かせざるを得ないだろう。ここは運営する大人の責任だ。エースに「もう、投げられない」と言わせるような状況まで追い込んじゃいけないよ。》(8月22日)
こういうコラムをスポーツ新聞でたくさん読みたい。朝日も同じ日の「今大会を振り返る」(スポーツ面)では、「投球数や回数の制限が必要なのか。日程に余裕を持たせる方法はあるのか。議論を続けたい」とサラッと触れているが、主催新聞社の記者はどう思うのか読みたかった。