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大橋悠依と恩師・平井伯昌の不在。
メドレー2冠ならずも輝いた泳ぎ。
posted2018/08/29 08:00
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph by
AFLO
「来年の世界水泳選手権、そして2020年の東京五輪で金メダルを獲るためには、ここ(アジア競技大会)では金メダルが獲れて当たり前なのかな、と思っています」
インドネシア・ジャカルタでの第18回アジア競技大会、競泳女子400m個人メドレー決勝で、4分34秒58の金メダルを獲得した大橋悠依(イトマン東進)は、いつになく強気で、前向きな言葉を残した。
しかし、これは不吉な予兆だったのかもしれない。
翌日、200m自由形予選後の大橋は体力的にも精神的にも明らかに疲弊していた。午後の200m自由形決勝では、何とか2分を切るタイムで泳ぎたいと話していたが、結果は2分00秒29の4位だった。
「予選よりはしっかりと身体は動いていたと思います。これでスイッチが切り替わって、最終日の200m個人メドレーに向けてスピードが出れば良いな、と思います」
そして中1日空けて迎えた競泳の最終日。勝負する相手は寺村美穂(セントラルスポーツ)と、韓国のキム・ソヨンと分かっていた。寺村、キムともに前半から積極的に飛ばしていくのが持ち味の選手。それに対して大橋はバタフライで焦らずに、背泳ぎから平泳ぎにかけて徐々に追い上げていき、最後の自由形で勝負をかける。この作戦でいけば、勝てるはずだった。
前日の課題を引きずりすぎた。
しかし、軍配はキムに上がった。
大橋は、前半100mを59秒台のハイペースで折り返したキムを捉えきれず、2位でフィニッシュ。2分08秒88と決して悪くないタイムだったが、個人メドレー2冠の目標を果たせず、プールサイドに上がるとうなだれるようにして肩を落とし、そして涙を流した。
実はアジア競技大会の間、大橋は常に自分と戦っていた。特に、女子200m自由形予選後の大橋のコメントは、揺れ動く大橋の気持ちを的確に表現していた。
「身体にも気持ちにも疲れがあって、朝のアップも良くありませんでした。ただ最後まで落ち着いて泳げていたと思います。試合期間が長いということもあって、自分は疲れてくると“自分の良くないところ探し”みたいなことをしてしまう。昨日(400m個人メドレー)の良くなかったところを、今もまだ少し引きずりすぎてるな、という感じはありました。
でも今日も(200m自由形)決勝もありますし、200m個人メドレーのレースも来ますから。200m個人メドレーは、キム選手には絶対に負けたくないので、それまでにしっかりと気持ちも身体も切り替えていきたいです」