濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アイスリボン取締役にして現役王者、
藤本つかさが語る「女性とプロレス」。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2018/08/22 10:30
自身が普段使っているデスクの前の藤本つかさ。団体運営と選手の二役を見事にこなす。
大会数、動員数ともに女子団体トップ。
取締役に就任してからは、異業種の女性経営者とのネットワークが増えた。
企業などの講演会に呼ばれることも多くなったという。アイスリボンはサンリオピューロランドでの試合など数多くのコラボレーション企画を実施しており、特に最近は“藤本案件”も少なくない。
芸能畑出身選手に加え小学生、中学生もデビューさせたアイスリボンを「学芸会プロレス」と揶揄する人間もいたが、今では大会数、動員数ともに女子団体トップを走る。コラボ企画、一般向けプロレスサークル運営などで間口を広げてきた成果だろう。
アイスリボンには学校のような面があり、この団体でレスラーとしての自我を確立し、自分なりにやりたいことができて退団していく選手も少なくない(藤本、都、ハム子が団体初の生え抜き10年選手だ)。それでも次々と新人がデビューし、新陳代謝が新鮮な風景を生み出して団体の人気を高めてきたというのが藤本の分析だ。
「子供もほしいしプロレスもあきらめない」
観客を増やすだけでなく、プロレスをやる女性も増やしたい、それが業界の隆盛につながると藤本は考えている。観戦に来た女性ファンや仕事で知り合った女性に「プロレスやってみませんか? 絶対できますよ。ここに連絡ください」と名刺を渡すこともよくあるという。
「私自身、プロレスをやってみて“こんなに人生を豊かにしてくれるものはないな”って思ったんです。自分が持ってる感情を全部表現して、それを見てもらって共有できるんですから。女性が闘いに向いてないということもないはず。“あの人に勝ちたい、負けたくない”って気持ちは誰にでもありますから。本当に他にないと思うんですよね、30過ぎて人前でケンカしていい仕事なんて(笑)」
30過ぎて、というところが藤本らしい。そういえば年齢や独身であることを周りからもネタにされてますよねと聞くと「いやいやネタじゃないですよ」と藤本。35歳なのは事実だし、結婚願望もある。女性として経験できる喜びを何ひとつ捨てる気はない。
「プロレスラーになった以上は女を捨てるとか人生捨てるとか、そういう考えは全否定したいですね。ウチの会社は産休手当、育児休暇があるので、選手としてしっかり使いたいです。もう五つ子とか産みたいですよ(笑)。子供もほしいしプロレスもあきらめないです、私は」