マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
横浜高校の万波中正がすごいぞ。
打てない球を追わなくなった大砲。
posted2018/08/03 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
この夏の予選旅は、「南神奈川」の決勝が締めくくりとなった。
今年の100回大会は、神奈川をはじめ、埼玉、千葉、愛知、大阪、兵庫、福岡が「1県2校」になった。口の悪い人は神奈川の南・北の分け方を、「横浜さん、どうぞ甲子園行ってください」みたいな分割などと笑っていたが、決勝で横浜高の相手になったのは鎌倉学園だった。
昨年秋の新チーム以降、鎌倉学園の快進撃はめざましいものがある。「古豪」などという称号はうかつに使えないほど、昨秋からこの春にかけて、真っ向勝負で強豪たちをやっつけてきた。その中には横浜高も入っていたから、もしや……の予感もあった。
鎌倉学園・竹内智一監督が筆者と同じ早稲田出身なのも、いくらか“応援”モードで球場に向かった理由だった。今のチームは強いが、その前までは夏でも1回戦、2回戦で早々に敗退することもあって、それでも、いつも選手たちより真っ黒に日に焼けて元気いっぱいの「竹内君」に、何かいいことが起こるのでは……そんな希望的観測も、試合が始まるまでは、実はあったのだ。
そんなほのかな期待も、試合開始早々あっさり粉砕されてしまった。
生まれ変わった横浜の万波。
横浜高・万波中正が変わった!
初回、1死一、二塁でやってきた最初の打席。万波中正は失投と思われるまん中高めのスライダーを捉え、あっという間にセンターフェンス直撃のライナー(二塁打)に仕留めてみせた。
カウントは追い込まれていた。春までのイメージで見ていたから、また顔のあたりのつり球を振り回して三振か、膝のあたりの高さでストライクからボールになるスライダーに手を出して三振か。いずれにしても、「追い込まれたら、ダメだろう……」、そんなちょっと退いた心持ちで見ていたらこれだ。
バットの振り出しがコンパクトだった。ヘッドも立っていて、ボールの下半分をこするように振り抜いたから、すばらしいバックスピンの効いた打球になって、ライナーの打球がぜんぜん落ちてこずに、そのままフェンスに当たって跳ね返った。
いつのまに覚えたんだ、あんな打ち方……。