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W杯早期敗退とドイツ国民の振る舞い。
一見サバサバでも本心はガッカリ? 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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posted2018/07/14 07:00

W杯早期敗退とドイツ国民の振る舞い。一見サバサバでも本心はガッカリ?<Number Web> photograph by Getty Images

まさかのグループリーグ敗退を味わったドイツ国民。でもその後は意外と冷静なようで……。

「ヤバそうだけど、まあ大丈夫だろ」

 公共放送の『ZDF』では、元ドイツ代表のGKオリバー・カーンやMFトーマス・ヒツルスペルガー、そして元シュツットガルト監督のハネス・ボルフなどがコメンテーターとして登場してドイツ代表の見通しなどを語っていて、決勝トーナメントに入ってからのプレーに注目したりもしていました。

 ちなみにボルフさんは、浅野拓磨(ハノーファー)や細貝萌(柏レイソル)が以前シュツットガルトに在籍していたときに35歳の若さで監督に就任した青年指揮官です。そう言えば細貝は、「ボルフさんは、見た目と違って普段からすっごい熱血なんですよ。指導方法も情熱的だし、ミーティングで熱弁を振るう。僕も拓磨も、何度も説教されたことがある(笑)」なんて言っていました。

 ドイツは西ドイツ時代を含めてワールドカップのグループリーグで敗退したことが一度もありませんでした。だからドイツ国民からすると早期撤退なんて想像も付かなかったと思うんです。「今は調子が悪いけど、準決勝、決勝にピークを持ってくれば……」という雰囲気は間違いなくありましたし、メディアも世論も、そうした余裕を漂わせていないと落ち着かないようにも見えました。

「なんかヤバそうだけど、まあ、大丈夫だろ」、みたいな。

敗退翌日以降も街中はいたって普通。

 しかし、続く韓国戦はなんと0-2で敗戦。『Kicker』ウェブ版では試合終了直後に「Historisches Aus! Weltmeister Deutschland ist raus(歴史的な敗戦! 世界王者のドイツが(大会を)去る)」という見出しが立ち、その衝撃の大きさを示していました。

 僕が住んでいるフランクフルトではそこかしこで車のクラクションが鳴り響きましたが、それは歓喜の宴の合図ではなく、苛立ちと失望が入り混じったドイツ国民の心からの叫びのようにも聞こえました。

 ただ、ここからがドイツらしいと思うのですが、試合当日にドイツ各地で何かの混乱や暴動などが起きたというニュースはなく、翌日以降の街中の様子もいたって普通でした。もちろん、新聞各紙などは1面でドイツ敗退のニュースを掲載していて、電車で通勤するサラリーマンらしき人々がそれを広げていたりもするのですが、皆さんとても落ち着いていらっしゃる。

 テレビも同様で、ドイツ敗退の検証番組などでもコメンテーターが客観的かつ理論的に言説を述べていらっしゃる。試合翌日の午前11時にロシアからドイツのフランクフルト国際空港に降り立った代表チームに罵声を飛ばすファン、サポーターはなく、ヨアヒム・レーブ監督やキャプテンのマヌエル・ノイアーが囲み会見を開くも殺伐感はなし。

【次ページ】 チーム構築の不備に内なる不満が。

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