炎の一筆入魂BACK NUMBER
目に見えぬ変化こそ、進化の証し!
大瀬良大地、2018年版の心技体。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/07/07 08:00
6月22日には両リーグ最速かつ自己最多に並ぶ10勝目。6月中の2ケタ勝利到達は2013年の田中将大以来。
心配性が、満足しない向上心に。
責任感、使命感の強さがときにマイナスに働くことがある。6月1日ロッテ戦もそうだった。3点リード4回、1死一塁から遊撃正面のゴロを田中がトンネル。併殺でチェンジのはずが、1アウトのまま一、二塁と局面は変わった。
味方を思うあまり「抑えなければ」という気持ちが強くなり、気持ちが先走り投球が単調になった。6番から9番まで4連続適時打を浴び、あっという間に試合をひっくり返された。
精神面はまだ成長途中にある。先発の一角から大黒柱となり、今後は「エース」まで上り詰めることが期待される。
まだまだ27歳には伸びしろがある。順調に勝ち星を積み重ねているように見える今季も、心技体ともに課題を見つけ、自分と向き合いながら一歩一歩、成長の階段を上がっている。心配性という性格が、現状に満足しない向上心に変わっている。
下位打線への対応は試行錯誤しながら「ストライクを取れるフォームを見つけた」ことで改善され、無駄な四球が減った。
技術のマエケン、気持ちの黒田。
スポーツ界でよく使われる「心技体」。何か1つでも欠けていてはいけないが、何を最重要視するかは個々で異なる。
近年広島のエースと呼ばれた投手たちも考え方はさまざま。現在ドジャースでプレーする元広島の前田健太は「もちろんメンタルも必要」と前置きしつつも「圧倒的な技術があれば、メンタルが弱くても勝っていける。技術が強い精神力を生む」と技を重要視していた。天才肌の前田らしい発想と言える。
一方、一昨年に現役を引退した黒田博樹氏は「気持ちだけで勝てる世界ではないが、気持ちがなければ勝てない世界」と語っていた。登板に向け、コンディションとともに気持ちを高ぶらせていくことも大事にしていた投手らしい考え方だ。
2人は対照的だが、天才肌と努力家というタイプが見えてくる。では、大瀬良は……。
考え込んだ末に出した答えは「やっぱり心ですね」だった。