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西野采配の妙は野球にも生かせる?
SB工藤監督が仕掛けるワナと奇襲。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/07/04 10:30
セ・パともに混戦のプロ野球。リーグ中盤にさしかかり、選手を見極めた監督の采配がより重要になってくる。
序盤の2回に一、三塁からエンドラン。
6月下旬といえば、昨年も6月25日のライオンズ戦で福田秀平が劇的サヨナラ本塁打を放ち、工藤監督が「シーズンの流れが変わったポイント」と話していた。
今年の劇勝もそれに近い雰囲気を感じさせるものだった。
ただ、それはあくまで結果の部分。目を引いたのは試合のもっと序盤、2回裏だった。
初回に柳田が18号先制2ランを放ち2点をリード。さらにこの回も1死一、三塁と追加点の好機を作り上げていた。ここで打席には9番の川瀬晃だ。今年、二軍で3割5分近い打率を残して一軍デビューするなど、このところ出番を増やしている高卒3年目の若手である。
まだ2回だ。いくら下位打線とはいえ、ノーサインでまったく不思議はない。だが、ホークスベンチは奇襲に打って出た。
カウント2ボール0ストライクから、ヒットエンドランを仕掛けたのだ。しかし、川瀬は内角の難しい直球を空振りし、飛び出した三塁走者がアウトになってしまった。結局この回は無得点に終わった。
「相手にこんなサインがあるのかと」
試合自体が劇的なサヨナラ勝利で決着がついた事もあり、そのシーンがメディアで報じられることはほとんどなかった。
しかし、試合後の監督囲み取材の終わりがけに質問をぶつけたところ、工藤監督は「待ってました」とばかりに少し笑みを浮かべて語り始めた。
「スクイズという方法もあったかもしれないけど、一・三塁からのエンドランはキャンプでも練習していた作戦です。厳しい場面だったかもしれないし普通に打っていくのも手だけど、相手にこんなところでこんなサインがあるのかと思わせるのも大事なこと。これからもどんどんやっていきますよ」