野球のぼせもんBACK NUMBER
西野采配の妙は野球にも生かせる?
SB工藤監督が仕掛けるワナと奇襲。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/07/04 10:30
セ・パともに混戦のプロ野球。リーグ中盤にさしかかり、選手を見極めた監督の采配がより重要になってくる。
「采配っちゅうのは相手の隙を突くこと」
好打者でも打率3割。2割5分ならば4回に1回しかヒットは生まれない。もし、相手投手がコントロールに苦しんでいた場合は、と考える。
その日の傾向やそれまでのデータを見極めて、ボール球が来る確率が打率(出塁率)より高いと思えば、たとえフルカウントでもベンチは『待て』のサインを出した。もちろん、見逃し三振でもそれはベンチの責任。打者は責められるはずもないし、考課表(査定)がマイナスにならないよう配慮がされていたという。
「それに相手の嫌がる野球をやっていた。たとえば初回無死一塁で、相手ピッチャーが苦しんでいる時に簡単に(バントで)送ったりはしない。そんなの相手を助けるだけ。采配っちゅうのは相手の隙を突くこと、嫌がることをやらなアカン」
ホークス打線の現状は低調だけに。
そういえば、工藤公康監督ももともと同じようなことを話していた。
しかし、その理想は今、遂行されているのか。今年のホークスは打線があまりに低調だ。上位で走者をためて4番の柳田悠岐で得点を挙げるというのがここ最近の勝ちパターンだが、5番以降になると一転して繋がりが悪くなる。
昨年を含め過去4年で3度日本一に輝いた王者ホークス。だが、今季は投打ともに主軸に故障者も出ており、どっしりと構えるだけの横綱野球ではなんとも苦しい。
さて、日付をまたいで行われたポーランド戦が終了したのが6月29日の午前1時頃。眠りにつき夜が明け、その日の夜はヤフオクドームでホークスvs.マリーンズのナイターだった。
この試合、ホークスにとっては「分岐点」になるかもしれない、大きな1勝を手にした。3対5で9回裏を迎えた。連打で無死一、二塁。
だが、ここで甲斐拓也があまりに痛恨の送りバント失敗。しかもゲッツーという結果に終わり万事休すかと思われた。しかし、ここから驚異の粘りを見せて最後は上林誠知の逆転2点三塁打で劇的なサヨナラ勝ちを収めた。