ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
ケニー・オメガが新日の“横綱”に。
WWEを経ずに目指す「世界一」とは。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEssei Hara
posted2018/06/13 11:00
絶対王者オカダ・カズチカからIWGPを奪い取ったケニー・オメガ。新日本のエースとして世界に羽ばたく。
高田延彦以来のジュニア&ヘビー制覇。
ケニーにとっては、来日10年目でついにつかんだ栄光。
外国人レスラーでIWGPヘビー級王者になったのは、ビッグバン・ベイダー、サルマン・ハシミコフ、スコット・ノートン、ボブ・サップ、ブロック・レスナー、AJスタイルズ、そしてケニー・オメガのわずか7人。IWGPのジュニアとヘビーの2階級を制覇したのは、ケニーと高田延彦のふたりだけという快挙だった。
ケニーは2年前にも、外国人レスラーとして初のG1クライマックス優勝という快挙を成し遂げているが、今回はそれ以上の重みがあると言っていい。G1はたしかに新日本最強を決めるリーグ戦だが、優勝者とは、いわば“その夜のチャンピオン”でしかない。それに対し、IWGP王者は団体の命運を託された存在。大相撲で言えば、“本場所優勝”と“綱取り”のような違いがあるのだ。
それをケニー自身も理解しているのだろう。試合後、マイクを握ると、流暢な日本語で、こんなことを語り始めた。
「この10年、色々なことを達成してきた。もちろん最後の目標は、このIWGPヘビー級チャンピオン。もし、このベルトが獲れたら、もう日本を離れるかもしれないと思っていた。でも、さっきの試合中、プロレスの未来を見た。プロレスが本当に進化したのを感じた。だから、新日本のリーダー、新日本のチャンピオンで、次のステップ、前へ進みたいと思います」
「国内規模でしかないという問題がある」
ケニーはIWGPヘビー級のベルトを巻くという目標を達成することで、その次の目標が、自身の海外での成功から、新日本プロレス自体をさらに上げていくことに変化した。
そして、その決意の言葉は、バックステージのコメントルームで、さらに強いものとなる。
「オカダ、お前は偉大だ。最高のレスラーだ。お前がこの団体をここまで大きなものにしてきたし、重要な役割を担ってきた。しかし、ここで1つ問題がある。それがまだ国内規模でしかないということだ。これからは俺が新たな物語を、新たな歴史を紡いでいく。今日、自分には最高の仲間がいるということを再確認できた。そしてこの仲間たちと一緒だからこそ、これからどんどん大きなことができると信じている。俺にはまだまだやるべきことがある」