ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
ケニー・オメガが新日の“横綱”に。
WWEを経ずに目指す「世界一」とは。
posted2018/06/13 11:00
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
Essei Hara
現代プロレスのひとつの頂点であり、極点を迎えたのだろう。
新日本プロレスの最高峰であるIWGPヘビー級選手権試合。6月9日大阪城ホールで行われたオカダ・カズチカvs.ケニー・オメガの一戦は、その数あるタイトル戦の中でも別次元のものになっていた。
両者はこれまで3度対戦し、1勝1敗1引き分けで五分の星だった。
初対決は2017年1.4東京ドーム。その1年前の2016年初頭、WWEに転出したAJスタイルズに代わって、バレットクラブのリーダーとなったケニーは、同年8月の「G1クライマックス」で初優勝。1.4ドームでオカダの持つIWGPヘビー級王座への挑戦権を獲得したが、この時点ではまだ、外国人のトップに立ってから1年経っていなかったため、「ケニーにドームのメインはまだ荷が重いのでは?」という声も戦前には聞かれた。
しかし、ケニーはそんな下馬評を見事に、そして大幅に覆してみせる。ケニーとオカダがそれぞれ試合の中で“K点越え”していくような攻防は、'90年代に“プロレスの終着点”とまで言われた、全日本の四天王プロレス(三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明による三冠ヘビー級王座をめぐる一連の闘い)とはまた違った極限の闘いとなり、年始の試合でありながら、年末に発表される「プロレス大賞」(東京スポーツ制定)の年間最優秀試合に選ばれたのだ。
トップギアで60分フルタイム戦い切った。
ケニーはこの一戦で敗れたものの、ベストバウトマシンとしての実力を満天下に知らしめた。そして、たった一度でブランド化したオカダとケニーの闘いは、半年後、6.11大阪城ホールで“第2ラウンド”が行われる。前回、46分45秒に及ぶ死闘の末ようやく決着がついた試合は、再戦ではそれをさらに上回り、結果は60分フルタイムの引き分け。
それまでのプロレスで60分フルタイムとなった試合は、陸上の長距離走のようにペース配分を考えた闘いになることが多かったが、オカダvs.ケニーはお互いトップギアに入れたまま60分駆け抜けるような試合となり、世界中のファンの度肝を抜いてみせた。