マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

PL学園から最後のプロ野球選手に?
東洋大学・中川圭太は完全に本物だ。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

PROFILE

photograph byAFLO

posted2018/06/12 08:00

PL学園から最後のプロ野球選手に?東洋大学・中川圭太は完全に本物だ。<Number Web> photograph by AFLO

昨年の夏季ユニバで日本代表にも選ばれた中川圭太。「PL学園出身最後のプロ野球選手」になる可能性が高いとも言われている。

守備に脆さがないのも中川の美点。

 これだけ「打てる二塁手」だと、守りはだいじょうぶなのか……と懸念されるものだが、中川圭太はむしろ「守れる二塁手」として高く評価したい。

 外野の芝生に入って守れるのは、横の動きと肩に自信がある証拠だ。

 180cmあると、大きく動いた時の球際で、体が浮いてあと1歩及ばない場面が多いが、中川のディフェンスにはそういう“脆さ”がない。

 アウトに出来るエリアはそつなくカバーして、おそらくゴロはイレギュラーするもの……という意識で向き合っているのだろう。打球が跳ねた時の“驚き”が見えず、何事もなかったようにさばいてしまう。

 二盗のベースカバーとタッチプレーの鮮やかさも、忘れずに伝えておきたい。一塁側に逸れたショートバウンドをグラブで吸収したままタッチプレーに持ち込む、流れるような連動の見事なこと、プロ野球選手を見ているようだ。

 実は、PL学園3年春の「中川圭太」の実戦を見ている。対戦相手は失念したが、大阪府大会の舞州球場(現・大阪シティ信用金庫スタジアム)だった。

 PL学園の野球部がなくなるかもしれない。そんなウソみたいな報道が流れた少しあとだった。

 そうはいっても、なんだかんだで存続するのだろう。そうに決まっている……という根拠なき予断と、目の前でノックを受けているPL学園の選手たちの、“あのPL”の末裔たちとはとても思えないような心もとないボールさばきと身のこなしを眺めながら、まさか……というゾクッとした思いを背中に感じて、シートノックが早く終わってくれないかと願ったものだ。

PLナインの中で1人だけ抜きん出ていた。

 そんなPLナインの中で、二塁手・中川圭太は1人だけ抜きん出て上手かった。

 たしか178cm68kgぐらい。スリムなユニフォーム姿とスマートな身のこなしが、今でもまぶたの裏にはっきりと記憶として残る。大学では、右にも打てて小技もできる融通の利くいい「2番打者」になるのでは、と思っていた。

 4-6-3の二塁送球に遊撃手のベースカバーが間に合わない。今のような一発長打の怖さは感じなかったが、それでもセンター前や右中間ならいつでも打てる。そんな、いかにもPLらしい「野球上手」な中川圭太を今でもはっきりと覚えている。

 あってはならない“一大事”が、まもなく現実になろうとしている重苦しさなど一切感じていないように、淡々と、飄々と、きちんきちんと折り目正しいプレーを重ねて、3年の夏はとうとう大阪の決勝まで勝ち進んだのだから、中川圭太自身もすごかったのだろうが、やはり「あのPL」が強かったのだ。

【次ページ】 名門の終焉期を彩って、プロへ。

BACK 1 2 3 NEXT
PL学園高校
東洋大学
中川圭太

プロ野球の前後の記事

ページトップ