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ジョコビッチと全仏の不思議な関係。
「マシン」ではない人間らしさが。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2018/05/30 08:00
負傷からの完全復帰を目指すジョコビッチ。2度目の全仏優勝へ、モチベーションは非常に高い。
過酷な赤土が人間らしさを引き出す。
一昨年の初優勝までに準優勝3回、ベスト4が4回。「今年こそは」の悲願は何度も打ち砕かれた。判官贔屓のパリの観客は「強すぎる」ジョコビッチをヒールに仕立て上げる傾向もあったが、2度目の準優勝、3度目の準優勝のときには、表彰式で1分間以上も止まないスタンディング・オベーションを捧げた。“最強の敗者”がついに堪えきれなくなって涙を流すまで。
情熱的なパリ、そして苛酷なレッドクレーは、ジョコビッチの人間らしさがもっとも豊かに引き出される舞台なのだ。特別なことが起きるのにふさわしい場所でもあるだろう。
「人間というのは力強いものだよ。困難もいつか必ず乗り越えられるときがくる。少なくとも僕は自分の経験からそう信じている」
完全復活を意味する「いつか」はまだ先かもしれない。しかしそこにつながる「何か」はここで大いに期待していいのではないだろうか。