サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
武藤嘉紀が代表に滑り込めた理由。
駆け引きと、リラックスのススメ。
posted2018/05/29 17:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Asami Enomoto
5月21日から日本代表の合宿がはじまったが、そこでは新たに合流した選手が心拍数を一定まであげる体力テストも行われている。2日目にそのメニューに臨んだ選手のなかで、1人だけ集団を引き離して、まるでマラソンの選手のように首位を独走する武藤の姿があった。
「人よりも頑張ろうという話ではなかったんですけど……」
少し表情を崩しながら、武藤はあの状況について続けた。
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「あれは心拍数をしっかり測っていて、ここまで上げないといけないという目安があって。もともと心拍数が上がりにくいんで、ちょっと速く走らないといけなかったという話です。まぁ、コンディションがいいのかな(笑)」
武藤は4月に入りハムストリングのケガでリーグ戦3試合を欠場していた。
しかし、4月22日のアウクスブルク戦に途中出場から復帰すると、翌週からシーズン最後の3試合はスタメンに名を連ね、残留を決めたドルトムント戦でのヘディングゴールを含め、1ゴール2アシストと結果を残した。
1年目は無理をして怪我を長引かせた。
もちろん、ケガからの復帰を目指すなかで、葛藤もあった。
「実は(アウクスブルク戦の)1つ前の試合で出ようか迷ったんですけど、もう1回やってしまったら本末転倒なので、そこで我慢できたんですよね。今までの自分だったら、そこで焦ってしまっていた。
でも復帰を1試合遅らせたことによって、良いコンディションで臨めた。なおかつ、そこで監督も使ってくれたというのが、良かったかなと思います」
マインツは残留争いの渦中にいたうえに、シーズン終了後にはW杯も控えている。それでも復帰を急がずに調整を続けられたのには理由があったという。
「やっぱり、過去の経験があったからじゃないですかね。マインツでの1年目に膝の外側の靱帯をやったときに、少し痛みはある状態で無理をして、同じところをケガしてしまったので。
あとはW杯が一発勝負で、ケガをして出られないというのでは意味がないので。まずはケガを治してから、と考えて。自分の場合はやっぱり、結果を残さないと呼ばれる立場ではなかった。最後の3試合にかけていた形ですね」