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井上尚弥、バンタム級でも強すぎ説。
余裕の3階級制覇からWBSS参戦へ。

posted2018/05/28 11:40

 
井上尚弥、バンタム級でも強すぎ説。余裕の3階級制覇からWBSS参戦へ。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

テレビ中継の“尺”を大いに余らせてしまうほどの圧勝劇。バンタム級でも井上尚弥は圧倒的だ。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Yamaguchi

 井上尚弥がまたしてもセンセーションを巻き起こした。25日、東京・大田区総合体育館で行われたWBA世界バンタム級タイトルマッチで、挑戦者の井上尚弥(大橋)は王者のジェイミー・マクドネル(英)に1回1分52秒TKO勝ち。度肝を抜くパフォーマンスでクラス最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」進出を宣言した。

 確かに井上が有利と目された試合ではあった。マクドネルの直近の試合であるリボリオ・ソリス(ベネズエラ)との2戦、そして亀田和毅の(協栄)との2戦を見る限り、取り立ててスピードやパワーがあるわけではなく、かといって曲者タイプというわけでもないことは明らかだった。突出した武器がないがゆえに、挑戦者有利の声が大勢を占めていたのだ。

 だからといって「井上有利」の予想は、「井上が簡単に勝つ」とイコールではない。マクドネルは32戦(29勝13KO2敗1分1無判定試合)のキャリアを誇り、WBA王座を5度防衛し、10年間負けなしの選手であり、実績は申し分なかった。

「ジャブを感じて大したことはない」

 身長175.5センチはこのクラスでは規格外で、当日の体重は前日計量から12キロ増の65.3キロ。身長165.2センチ、当日体重59.5キロの井上がスピードでは大きく上回るとはいえ、これだけの身体があれば、井上のパンチにもそれなりに耐えられそうだし、英国人が小柄な日本人を押し込むという場面も十分にあり得ると思えた。何よりプロ15戦(15勝利13KO)の井上はこの試合がバンタム級初戦である。そんなに何もかもがうまくいくのか? マンガじゃあるまいし、という思いもあったのである。

 ところがふたを開けてみれば、力の差は歴然だった。井上は試合開始わずか30秒ほどで「ジャブを肌で感じて大したことはない」と感じると、セコンドの「1ラウンド目は様子を見ていこう」という指示を無視して一気にギアをトップに入れる。“モンスター”がまるで怒りをぶつけるかのように前に出た時点で勝負はついていた。

【次ページ】 相手が万全の調子だったとしても。

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