ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥に久々の真剣勝負が到来。
3階級制覇の相手は10年間無敗。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2018/05/24 17:30
井上尚弥が苦戦する姿を想像するのは難しい。しかしボクシングにおいて階級の影響は大きい。果たして結果は。
バンタム級ということを忘れてはいけない。
本稿を含め、日本のメディア、英国のメディアまでもが「井上有利」という予想に傾いている。そんなムードに冷や水を浴びせたのはマクドネル陣営のトレーナー、デイブ・コールドウェル氏だ。
「井上は素晴らしい選手だが、彼が最高と言われたのは、バンタム級より下のクラスでの名声にすぎない」
そうなのだ、そのことを忘れてはいけない。確かに井上はスーパーフライ級で圧倒的な強さを誇った。練習ではスーパーバンタム級やフェザー級の選手をボコボコにしているが、スパーリングはスパーリングにすぎない。
クラスを上げるということは対戦相手の耐性も上がるということで、井上のパンチが思いのほか効かないという可能性もある。なかなかパンチが届かずにペースをつかめず、井上がパニックに陥る……。そんなケースだってないとは言えない。
本気で井上に勝てると考えている久々の相手。
公開練習でメディアの取材に応じたマクドネルは頼もしかった。
「自分はバンタム級最強だと思っている。それを証明するためにこの試合を受けた。100%の自信を持っていなかったら、今ここにはいない」
マクドネルは今までの対戦相手とは明らかに違う。井上を相手に1ラウンドでも長く生きながらえれば栄誉だとは決して考えていない。長身の英国人は本気で井上に勝てると考えている。
井上にとって今回の一戦は「有利」とは言えても、決して「勝って当たり前」の試合ではないのである。
“真剣勝負”に飢えまくっていたモンスターがマクドネルという好敵手を相手にどんなパフォーマンスを見せるのか。今回ほど「尚弥を見たい!」と思わせる試合はない。