ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥に久々の真剣勝負が到来。
3階級制覇の相手は10年間無敗。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2018/05/24 17:30
井上尚弥が苦戦する姿を想像するのは難しい。しかしボクシングにおいて階級の影響は大きい。果たして結果は。
身長、リーチでは10センチ以上相手が上。
加えて、この試合の先に、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)という賞金トーナメントへの出場が開けていることも、井上の闘争心を大いに駆り立てている。WBSSには既に3人のバンタム級世界王者が出場を表明。真の世界一を決めるトーナメントからオファーが届いた井上は「絶対に出る」と意欲満々だ。
さて、前置きが長くなったが、マクドネル戦をプレビューしよう。マクドネルの最大の特徴は何といってもバンタム級では破格の体格である。身長は175センチで165センチの井上よりも10センチ高く、リーチでも10センチ以上長い。
ボクシングスタイルはジャブとワンツーを主体に左フックを絡めていくオーソドックスなもの。パンチ力やスピードに目を見張るものはないが、左ボディ打ちもなかなかうまい。多くの対戦相手は、まずは距離の長いジャブに苦しめられることになる。
'15年には2戦続けて亀田和毅(協栄)と対戦しており、スピードのある亀田に初戦は114-113×3の小差判定勝ち、再戦では最終回にダウンを奪い、117-110、116-111、115-112で返り討ちに成功した。
会長は「すべての面で尚弥が上回る」。
では“最強の相手”を井上陣営はどう見ているのだろう。父でトレーナーの真吾氏は、マクドネルの公開練習を視察したあと「(軽く動いただけなので)よくわからない」と前置きしながらも「尚弥のスピードについてこれないんじゃないですかね」と言い切った。
大橋秀行会長にいたっては「すべての面で尚弥が上回っている」と自信満々だ。
確かにマクドネルは全体的にレベルは高いとはいえ、井上と比較してしまうと突出した武器を持っているようには見えない。最大のアドバンテージである体格においても、やや背を丸めて構えるクラウチング・スタイルのため、それほど身長差の影響が出ないように思える。
となると、井上が距離を取りながら自在に出入りを繰り返し、最後は強烈な左ボディブローで、マクドネルの細身のボディをへし折る。キャンバスに力なく膝をつく王者の寂しげな姿が目に浮かぶようである。