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いずれはバスケ女子代表のHCに――。
現役時と変わらぬ大神雄子の情熱。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byYuko Oga

posted2018/05/20 09:00

いずれはバスケ女子代表のHCに――。現役時と変わらぬ大神雄子の情熱。<Number Web> photograph by Yuko Oga

4月に渡ったロシアでは、中国WCBA・山西時代の恩師で現在はダイナモ・クルスクでコーチを務めるルーカス・モンデロとセサル・ルペレスと再会。

引退に際しては、心は揺れに揺れた……。

 現在の大神の思いの話に入る前に、時間を少し巻き戻そう。

 大神がSNSで「自分自身のラストの集大成のシーズンにしたい」と書いたのは去年6月のこと。ラストシーズンに入る前の潔い引退発表として話題になった。

 しかし実のところ、『ラストシーズン』を送る途中で、大神の気持ちは何度も揺れたという。

「正直、シーズン中も迷っていたんですよ。人間なんで、行ったり来たりあるじゃないですか。その時に少しでも調子がいいと、まだやれるんじゃないかって思ったり、逆に疲労が抜けなかったりしたときは、やっぱりこれでよかったんだと思ったり。

 チームメイトも『シンさん、あんなこと先に言ったけど、どうせ6月ぐらいには渡米して1カ月ぐらいトレーニングして、また7月にチームに合流するんでしょ』とか、『やめる、やめる詐欺じゃない?』とか言ってくるんですよ。まんざらでもないなと思いながら、笑ってごまかしていた時期もありました」

「これで本当にラスト?」と自問自答。

 迷いは最後の試合まで続いた。

 WJBL準決勝でデンソーに敗れたときには、目標としていた優勝に届かず、決勝戦にすら進めなかったことにショックを受け、「これで本当にラスト?」と自問自答していた。

 そんな迷いの気持ちが吹っ切れたのは、現役最後の試合だった。

 3位決定戦でシャンソン化粧品相手に、苦しい展開から、残り20.41秒で高校の後輩、水島沙紀が3Pを沈めて逆転勝利。チームメイトたちが自分のラストゲームを勝利で飾りたいという気持ちで最後まで諦めずに戦ってくれ、それが劇的な勝利につながったことで、ようやく『これでいいんだ』と納得したのだという。

「正直、ああいうゲームって作れるものじゃないじゃないですか。みんなはもちろん、それぞれ個人のためにやったと思うんですけれど、最後、みんながあの送り出し方をしてくれた。自分もそういう思いで最後、取り組めた。その最後の形があの試合、あの展開だし、あの勝ち方になったのかなっていうふうに思えた」と大神は振り返った。

 ということは、最後の試合で納得できていなければ、引退を撤回した可能性もあったのだろうか? そう聞くと大神は「今だから言えますけど、ありえたかもしれない」と認めた。

 それでも、そうはならなかった。それも運命だ。最後の試合が終わり、これでよかったと思えた瞬間、大神の現役生活は終わりを迎えていた。

【次ページ】 様々なスタイルのコーチと出会ってきた。

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