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テニスの試合後会見はスリリングだ。
ジョコビッチや杉田祐一に見た内面。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2018/05/16 11:00
ジョコビッチの会見のワンシーン。対戦相手だけでなくメディアとの“駆け引き”も、有名選手には必要なのだろう。
ローマでは「3分でお願いします」。
ローマでは、会見場に姿を見せると「3分でお願いします」と牽制球を投げてきた。
「あまり気にしていなかったんですが、けっこう負けが込んで、みんなに心配されて、あれ、俺、そんなに負けているのかと。なんか、そこから迷走ではないですけど、ちょっと抜け出せなくなっている感覚はあるんですけど、そこはあんまり言いたくないっていうか。
弱っているような感じは見せちゃいけないというのはあります。とは言っても、ひどすぎる試合が続いているので、どう立て直すか、今、考え中です」
ネガティブな言葉を口にすれば、ますますその感情に支配されるので、それを避けたいのだ。
「調子いい選手は生き生きしていますし、エネルギーが出ている。それは今、自分にないのかなとは思っていて。でも、そういうふうに思われたくないというのもありますし、自分自身でもそういう状況を作り出してしまったらだめだと。一回、怒りからパワーを出したいとも思ったんですけど……。ドイツ(ミュンヘン)でラケット折って。
でも、折ってもエネルギーが出てこないですし。一番ダメですね。とにかくどんな形であれ、自分のエネルギーをコートに置いてこないといけないんですけど、それがうまいこといってないのが残念、そこが一番悔しいです」
結局10分近く、内面を言葉にした。
杉田は、あまり言いたくないと言いながら、現状をさらけ出した。弱っているように見られたくない、という複雑な内面も率直に言葉にした。
3分間の約束だったが、結局、通常の記者会見と同じ10分近い取材となった。
悔しい負けを味わっている選手の会見は、だから我々には貴重な機会なのだ。
蛇足になるが、こうした10分間が、選手にとって冷静に試合を振り返る機会になれば、自分の考えをまとめ、次のチャレンジへのモチベーションの一助になれば、と心の隅で思いながら、彼らの話を聞いている。