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イチローが考える大谷翔平の超才能。
速球や長打力より大事な能力とは?
posted2018/05/12 07:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Kyodo News
“祭り”はやってきた。
5月4日、セーフコフィールド。イチローと大谷の夢対決は消滅したものの、ふたりが公の場で初めて顔を合わせる。
一塁側のダグアウトからイチローがフィールドへ出てきたのは午後4時15分。そのとき、大谷翔平は左翼付近で水原一平通訳とキャッチボールをしていた。
イチローの姿を見つけた大谷がトボトボと走り出す。一方のイチローはカノとゴードンと仲睦まじく話していた。大谷には背を向けながら。
「振り向いちゃ、ダメだ」
カノなのか、ゴードンなのか、どちらかが言ったという。
イチローにも大谷が近づいていることはわかっていた。
「ディー(ゴードン)のサングラスに(大谷の姿が)映っていたんでね、うん」
近づいた大谷が挨拶をしようとした瞬間、イチローが逃げ出した。大谷も負けじと追いかけた。
日本人選手ふたりの応酬にカノとゴードンは大笑い。5メートルほど“鬼ごっこ”は続いたであろうか。振り向いたイチローと大谷が、がっちりと握手を交わし、ふたりは再会を喜び合った。
イチローの前で躍動した大谷翔平。
44歳が“いじめっ子キャラ”の本性を見せたのに対し、“待ってくださいよぉ~”とばかりに追いかけた23歳も“甘えん坊キャラ”の一面を十分にのぞかせた。
21歳の年齢差だから生まれた光景とも感じたが、ふたりの距離感が近いからこそ生まれた“祭り”の幕開けに、誰もが笑顔となった。
その日、5番・DHで出場した大谷は2安打、1打点の活躍。
イチローの前で躍動した。