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陸上・多田修平が語る100m観戦術。
「中盤の加速を見てほしいですね」。
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/05/21 10:00
スタート前と、20~40mに注目してほしい。
――多田さん自身もほかの競技を見たり、他の選手の走りを観客席から見ることもあるんですか?
ありますね。でも、世界大会レベルの競技場だと、本当に規模がすごく大きいんですよ。実際にロンドンの世界陸上の会場も2階席になると、選手がかなり遠く見える。なかなか肉眼で観戦しようとすると辛いものがあるんです。だからここにあるような双眼鏡を使えると、すごく見やすくなると思いますね。覗いていても視野が広くて、実際に自分の目で見ている感じがします。これなら100mのスタート地点まで、よく見えるなぁ。
――ファンの方々に見てほしい短距離走という種目特有のシーンや瞬間はありますか?
陸上って号砲を聞いて出るじゃないですか。だからスタート前って会場がめちゃくちゃ静かになるんですよ。あの瞬間はすごく集中できるというか、自分の世界に入れるんで、その場面は自分でも結構好きかなと思いますね。テンションも上がるので、そういう時の表情や集中するための仕草は、ファンの皆さんにぜひ見てほしいです。
――陸上ではリレーの前のパフォーマンスも話題になりますよね。
リオ五輪ではリレーチームの“侍ポーズ”が話題になりましたね。それもあって去年の世界陸上の時は「何か日本らしい仕草はないか」と必死に皆で考えて、お辞儀にしたんですけど(笑)。あのシーンなんかは双眼鏡使って見れていたら、僕の困った顔までハッキリ見れてめちゃめちゃ面白いと思いますね。海外の選手なんかは凄く派手にやりますし。
――他にも多田選手が見てほしいポイントはありますか?
僕は報道では「スタートが得意」と言われることが多いんですけど、実はスタートの瞬間はそんなに速くないんです。スタートで飛び出しているように見えるんですけど、号砲が鳴ってからの反応速度が早いわけではない。中盤の加速から流れに乗っていくことで、スタートが早く見えるんじゃないかと。その20m~40mの間くらいの2~3秒を見逃さずに見て欲しいです(笑)。
―― 一瞬ですね! でも、こういう風に注目ポイントを教えてもらえると、見る方も楽しいですね。
スタートではどの選手が出てきて、後半ではこの選手が出てくる、という流れを知っているとレース展開を予想できたりして面白いかもしれないですね。さっきも言ったようにボルト選手はスタートがめちゃくちゃ下手なんですよ。そこから段々、加速していく感じで。もう、車みたいなイメージです。最高速度がかなり後半で出ているんです。