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伊藤ふたば 16歳、土肥圭太 17歳。
ふたりのユースが見据える“世界地図”。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2018/05/10 11:00
2020年に18歳になる伊藤ふたばが目指すものは。
長い手足と高い柔軟性を活かす伊藤。
適応能力とポテンシャルの高さを見せたふたりのうち、先に新たなステージの扉をあけたのは伊藤だった。
モスクワ大会は20選手で争う準決勝に進むと、準決勝1課題目を5度目のアテンプトで残り13秒でゴールし、最終課題も3アテンプト目で完登した。アテンプト差に泣いて6名で競う決勝進出はかなわずに8位に終わったものの、昨年のW杯年間女王のショウナ・コクシーと並ぶ2完登3ゾーンの結果は次への自信に繋がったはずだ。
伊藤の持ち味は長い手足と高い柔軟性を活かしたクライミング。リーチを最大限に活かしたり、体を巧みに小さく折りたたんで足を狭い空間に入れたりする。そして、最大の強みがコンタクト・ストレングス(接触筋力)。指先がホールドに触れた瞬間に握り込む能力が、ほかのクライマーよりも秀でている。このため伊藤は、ランジ課題やコーディネーション課題で、指先がホールドに引っかかれば攻略できてしまうのだ。
ただ、こうした能力だけでは決勝進出が難しいのがボルダリングW杯。リーチの長さだけでは解消できない、フィジカル強度の高い課題が準決勝で出されるため、攻略にはパワーが求められる。16歳の伊藤に、野中や野口のような腕で上体を完全にロックする(引き付ける)パワーが備わってくれば、さらなる飛躍が期待でき、決勝へコンスタントに進出することも見えてくるはずだ。
自分の強化ポイントを見極めている土肥。
全身のパワー強化というテーマは土肥にも当てはまる。
女子選手よりも体の成長が遅れてくる男子選手にとって、パワーやフィジカルが伸びるのは18歳くらいから。ようやく体ができつつある土肥は、ロシア大会も57位で予選敗退に終わると、「パワーやカチ(ホールドの持ち方の一種)の保持力を高めていかないと、いまのままだと通用しないですね」と、強化ポイントをしっかり見極めてトレーニングに励んでいる。
こうしたものは一朝一夕で高まったりしないとはいえ、スラブでの足への乗り込みの上手さや、垂壁でのテクニックの豊富さに眼を見張るものがある土肥が、フィジカル強度とパワーを高めていったらと想像すると末恐ろしい限りだ。