セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ユベントスに中指を立てたナポリ。
「最後までスクデットを信じる」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/04/28 17:00
34試合を終えてナポリはたったの2敗。リーグ戦残り4試合は中位の難しい相手が続くが、勢いは明らかにナポリにある。
敵地でサッリは中指を立てて見せた。
試合前、ナポリのチームバスがスタジアムに到着したとき、彼らは数百人のユベンティーノたちから罵詈雑言の歓待を受けた。
聞くに堪えない罵倒の嵐の中で、バスの先頭に乗り込んでいたサッリはお返しだとばかりに敵意むき出しで中指をおっ立てて見せた。
試合後の批判を見越していたサッリは「あれ(中指)はユーベ・ファンに向けたものじゃない。一部の不届き者に向けたものだ」と嘯きながら、「彼らはチームとナポリの人たちを罵り、唾を吐いてきた。許せるか」と凄んだ。
タイムアップの瞬間、サッリはまるで酒場の親父のように、傍のスタンド席にいたナポリ・ファンたちと手を叩き合って歓喜の快哉を叫んだ。
戦術家で知られるはずのナポリの指揮官は、もしかしたら選手よりも血の気が多い。
サッリは欧州一、竹刀と一升瓶が似合う指導者だろう。まるで梶原一騎がシナリオを描いているのでは、と思わせるようなナポリの劇画チックな戦いは、いよいよクライマックスを迎えようとしている。
白熱する今季のカンピオナートはわずか4節を残すのみ。逃げるユーベにはもう飛ぶ足もガソリンも残っていない。だが、ナポリはまだ遠く、高く跳べるはずだ。
戦え、ナポリ。
最後の1cm、1mmまで。