セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ユベントスに中指を立てたナポリ。
「最後までスクデットを信じる」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/04/28 17:00
34試合を終えてナポリはたったの2敗。リーグ戦残り4試合は中位の難しい相手が続くが、勢いは明らかにナポリにある。
文句のつけようがない勝利なだけに。
消極的姿勢を批判されたアッレグリは「うちの選手たちは年間57試合も戦っているんだ。(心身の疲労があって然るべきなのだから)批判することは許さん!」と、激昂しながらチームをかばった。日頃イタリアン・ダンディを気取る彼が、なりふり構っていられない。
1-0という最少スコアで決着したゲームは極端に決定機が少なく、フィジカルと技術、そしてメンタルの強さが試された。
むしろ自分たちが得意とするはずのタフな神経戦に敗れたことで、常勝軍団ユベントスが抱えた動揺は大きい。
もしナポリ戦が泥仕合や判定に物議を醸すような荒れた試合であったなら、ユーベの反抗心はなお掻き立てられたかもしれない。
しかし、クリロナより高く飛んだクリバリの決勝ゴールも試合内容も、ナポリの勝利には文句のつけようがなかった。それがまたユーベの心理面に深刻な影を落としている。
クラブ予算はユーベの3分の1。
「ナポリのクラブ予算は、ユーベの3分の1だよ」
まだ寒かった時分に、ナポリのサッカーを称えて止まないカルチョ界の御大サッキが言った。感嘆が込められている。
“スクデット決戦”には、試合の残り時間が5分を切っても、まだ何か起こるはずだ、という予感があった。
2年前の対戦をナポリ・ファンが忘れたはずがない。
今季と立場を逆にして、ナポリは首位でトリノでのスクデット決定戦に乗り込んだ。
試合終了間際の88分、伏兵ザザに決勝弾を喰らいナポリは首位陥落、スクデットの夢はそのまま潰えた。あの試合で、DFクリバリーもFWカジェホンも涙を呑んだ。
この3年間、サッリ親分が先発を託す11人の顔ぶれはほとんど変わっていない。22日の夜、アリアンツ・スタジアムで先発した11人のうち、2年前のカードと同じ名前が9人も並んだ。DFグラムも故障中でなければその場に立っていたはずだ。
もう1人、FWイグアインは倒すべき敵チームの輪の中にいた。
90分間、彼らはチャンスを待ち続けた。
右コーナーからカジェホンが蹴ったボールを、クリバリーは逃さなかった。2年分の思いが詰まった一撃だった。