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4000枚の写真から選ばれたこの1枚!
羽生結弦の「眼力」を堪能する。
posted2018/04/05 17:00
text by
後藤茂仁(Number編集部)Shigehito Goto
photograph by
Asami Enomoto
平昌オリンピック、フィギュアスケート男子フリー。前日のショートプログラムで首位となった羽生結弦は、観衆の大声援のなか最終組の4番滑走に登場した。
冒頭の4回転サルコウ、4回転トウループは、GOE(出来栄え点)で満点の3.00を獲得する完璧なジャンプ。前日と同様に、会場の空間を支配するような華麗な演技が続く――。
それが一瞬揺らいだのが演技中盤だった。
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本来予定していた4回転トウループからの3連続ジャンプが、着氷の乱れで単独となってしまう。
右足首の怪我で約4カ月も実戦から離れていた羽生に、フリーを滑り切る体力が戻っているのか? 大会前から懸念されていた不安が再び頭をもたげる。
しかしその直後、そんな不安は覆されることになる。
羽生は続く連続ジャンプの内容をトリプルアクセル-2回転トウループから、トリプルアクセル-1回転ループー3回転サルコウの3連続へと変更し、失った得点の巻き返しを図ったのだ。
力強い和太鼓の音とともに盛り上がっていく音楽にのって、後半も熱のこもった演技を続ける羽生は、最後のジャンプとなる3回転ルッツでバランスを大きく崩すも手をつくぎりぎりでこらえ、見事金メダル――五輪連覇を達成してみせた。
「撮る側も圧倒される演技でした」
今回発売されたNumberPLUS『FIGURE SKATING TRACE OF STARS 銀盤の聖者たち』のカバー表紙となった写真は、まさにその“巻き返し”の3連続ジャンプに入る直前の羽生を捉えたものだ。
ジャッジの方向に向けて右手をかざす(印を結ぶ)その表情は、勝利へと向かう気迫に漲りつつ、どこか自信を感じさせる笑みのようにも見える。
羽生がこの表情、姿勢を見せたのは、映像を見返してみても1秒に満たないほどの一瞬。撮影したカメラマンの榎本麻美はこう話してくれた。
「今大会では表情からすごい気迫が伝わってきて、撮る側も圧倒される演技でした。表紙のカットは狙って撮れたものではないんです。必死でシャッターを押し続けていたら撮れていた、という一枚でした」