イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー、44歳での開幕スタメン。
「20歳のあの時に近い感覚がある」
posted2018/03/30 11:20
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
イチロー、メジャー18年目の開幕を迎えるにあたり、ふと思ったことがある。
昨季までの日米通算26年間のプロ生活において、彼は果たして、いくつの歴史を作って来たのだろうか、と。
そしてまた、新しい歴史が今季も作られていく。シーズンのはじまりはいつでも高揚感を伴うものだが、2018年のイチローの歩みが、楽しみでならない。
開幕前日。「9番・左翼」での開幕スタメンをスコット・サービス監督が発表した。指揮官は右ふくらはぎを痛めたことや頭部死球を受けたことを振り返り、イチローの今キャンプを「クレイジー」と表現した上でこう続けた。
「最後の2日間で右ふくらはぎの状態が大丈夫であることを示してくれた。9番打者とし て、チームにさまざまな貢献をしてくれるはずだ」
実は、イチローには“もしや”の不安があった。それは“自分は開幕ロースターに入れるのだろうか”、ということだった。
「こんなギフトがあるなんて」
首脳陣は最後の最後まで2つの選択肢を持っていた。右ふくらはぎに不安を抱えるイチローを登録するか、それともイチローをロースターから外し、内外野を守れるユーティリティーのテイラー・モッターにするか。
首脳陣がその決断を下したのは28日午前。イチローに伝えられたのは、外野守備練習中のことだった。指揮官から直接聞かされたその吉報に、44歳のメジャーリーガーは何を感じたか──。率直に訊ねると、彼は喜びを隠すことなく表現した。
「まず、ここ、セーフコフィールドに立つことが大きな目標でしたから。途中からは。こんなギフトがあるなんて思いもよらなかったですから。いやーもうー、なかなかこう言う気持ちになることはない。アメリカでは少なくともなかった。ここまで我慢してくれて、最終的にこの判断をしてくれた。
(キャンプの)途中から入ってきて、ケガをして、の選手に対する扱いではないですからね、これは。当時、仰木監督がそういう思いにさせてくれたんですけど、20歳の時ね、僕が。それに近い感覚がある、この判断は。びっくりしました」
聞き手として、心が動かされるような言葉だった。