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昌子源が説くハリルJでのデュエル論。
個で優る相手といかに戦うのか?
posted2018/03/23 11:40
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
ミックスゾーンでの昌子源は、とてもリラックスしていた。
代表のジャージを着た彼を取材するのは、昨年11月のブラジル戦前以来だったが、そのときは少しピリピリしているような印象を持った。当時、鹿島アントラーズは、優勝争いの佳境を迎えていた。9月下旬には8ポイント離れていた2位との勝ち点差も4ポイントまで詰められたし、ブラジル戦で先発から外れることも感じ取っていたのかもしれない。
結局、ブラジル戦だけでなく、ベルギー戦も出場機会がなかった。そして、J1でも優勝を逃した。その1週間後のE-1フットボールチャンピオンシップでは出場機会を得たものの韓国に1-4と惨敗して、こちらも2位で終わっている。
E-1はJリーグ閉幕直後に代表合宿が始まり、気持ちの切り替えも難しかったに違いない。それが結果に影響したとは思わないが、昌子の心中を察すると、悔しさしか残らなかったのだろうと思った。それはほとばしる熱を持った悔しさではなく、どこか冷たさを感じる悔しさだ。
麻也の負傷を「深くは考えずに」。
ワールドカップイヤー初戦となる試合を前に、昌子は前向きに当時を振り返った。
「チームも代表も2位でしたね。自分も世界トップレベルのブラジルやベルギーと対戦できるチャンスがあったのに、出られなかった。いろんな悔しい想いが続きましたけど、去年は去年ですし、今年は今年だから。
代表の悔しさは代表で晴らす。代表の悔しさを鹿島でということはないし、鹿島の悔しさを代表でというのもナンセンスだと思っている。あのときの悔しさ、E-1の悔しさもそうですけど、マリ戦とウクライナ戦で晴らしたいと思います」
今回の遠征には吉田麻也が負傷のために参加していない。その代役として出場が濃厚という状況もあるのだろう。大きなチャンスが到来したわけだが、前のめりな様子もない。
「そんなに深くは考えていません。ただ、自分の思い通りのプレーをしたい。それができれば、全く問題はないと思っている。もちろんそういうプレーはクラブと違って、代表で出すのは難しいけれど」
自信を漂わせながらも、慎重にそう答える。その難しさは言葉では説明できないのかもしれない。練習時間が短く、戦術もクラブとは異なる。そして、代表という特別な舞台……。自身がそのピッチに立ってきたからこそ、実感する難しさなのだろう。