大相撲PRESSBACK NUMBER
厳寒ウランバートルで相撲文化を問う。
日本は育成制度でモンゴルに劣る!?
posted2018/03/08 16:30
text by
森哲志Tetsushi Mori
photograph by
Tetsushi Mori
日馬富士による暴行・傷害事件の被害者貴ノ岩の十両復帰が取りざたされる大相撲春場所。
初場所途中休場の白鵬も出場予定で、特段の騒ぎもなく順調に進みそうだが、日本の国技がモンゴル出身力士になかば「主役」を奪われて久しい。
遠い遊牧の地からやってきた異国の力士に温かなエールを送っていた相撲ファンも相次ぐ不祥事に見方も感情も次第に変化してきているように思う。
ではこの事件、モンゴルでは一体どんな風に受け止められているのか。
厳寒のウランバートルで取材したところ、意外や意外、まさかこんな反応だったとは……。
大相撲はモンゴルにおける「夢の経済指標」。
3月に入っても氷点下が続くウランバートル。
大相撲初場所(1月14日~28日)中に訪ねた時は、氷点下25度。息で霞んだ眼鏡レンズが瞬く間に霜で白くなるほどの冷たさ。耳などとても露出できない。引きちぎられそうに痛い。しかし、どこも室内に入れば別。全く寒さを感じさせず、日本の家屋の方がよほど寒いくらいだ。
日馬富士引退を含む一連の出来事をどう思っているのか――目抜きの平和大通りにあるノミンデパートで、40~50代の男性たちに聞いてみた。
「いつものモンゴルいじめがまた始まった。騒ぎすぎじゃないか」と元警察官。
「優勝盾をモンゴル力士が独占するから貶めようってことだろう」とドンドゴビ地方からの出稼ぎ者。
大体、予想していた通りの意見、反応である。
モンゴルの相撲人気は、日本よりもある意味、凄まじい。「相撲好き」というフェイスブックのサークルには3万5574人ものファンが登録。日々お気に入りの動画や写真を公開して、日本国内のテレビ、雑誌メディアの報道も事細かに伝えられ、相撲の情報は即座に広まるようになっている。
モンゴルという国が日本の大相撲に関わって以来26年が経った。モンゴル人の平均寿命は69歳だから……相撲を支える熱狂的なファンはまだ三世代分というところだ。
そんな国で、一歩踏み込んだ取材をすべく一般市民に正直な反応を聞いてみると、事件の捉え方も見方もやや趣が違ってくる。