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「スポーツは戦争のようなものだけど」
メドベデワとザギトワの本当の関係。
text by
栗田智Satoshi Kurita
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/03/09 11:30
2人は3月21日開幕の世界選手権にも出場予定。3連覇がかかるメドベデワと初出場のザギトワはどんな演技を見せるか。
「スポーツはある種、戦争のようなもの」
すべての試合が終わった後、2人は肩を組みながらロシアのテレビインタビューに応じた。
「ジェーニャと私はまずは親友です。そして競争相手でもあります。お互いに競争し合うからこそ、私たちはさらに高い場所へと達することができるんです」
そうザギトワが話せば、メドベデワもこう語った。
「私たちがリンク外でライバル関係にあると書かれたものは何度も目にしてきました。でも、私たちはこの通り親友です。何でも話し合える関係です。もちろんスポーツはある種、戦争のようなものですから、勝つためには牙をむいて戦わなければならないこともあります。まさに今日の私たちのように」
「戦争」や「牙をむいて」といったフレーズが飛び出しつつも、実際の話は笑いの絶えない非常に和やかなものだった。
「私は対立を好むような人間ではありません」
もし今回2人ではなく1人だけの五輪だったら、どんな戦いになっていただろうか。メドベデワにしてもザギトワにしても、金メダルこそ手にしたかもしれないが、ここまで感動を呼び起こす好勝負は生まれなかっただろう。初めての五輪の大舞台というプレッシャーのなか、そして、さまざまな風評が飛び交うなか、孤独な戦いを強いられていたかもしれない。
ロシア帰国後、メドベデワはテレビ番組でアレクセイ・ヤグディンによるインタビューを受けている。ヤグディンが自身のエフゲニー・プルシェンコとの確執を引き合いに出しながら、ザギトワと対立が本当に起こらなかったか切り込んでいくと、メドベデワはこう答えた。
「私は対立を好むような人間ではありません。相手との衝突をどうにかして避けようとする性格です。もちろん、スポーツにおいてライバル関係は当然起こるものです。しかし、その対立を乗り越えたとき、2人の関係はもっと強固なものになっていくんです」
メドベデワとザギトワによるお互いを高め合う美しい戦いが、この先ひと試合でも多く見られることを願ってやまない。