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小平智のドライバー探しは大変だ。
1g以下の違和感を消すための1本。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2018/02/25 07:00

小平智のドライバー探しは大変だ。1g以下の違和感を消すための1本。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

宮里優作と賞金王を争うなど、小平智は着々と日本トップクラスまで上り詰めた。マスターズ出場も視野に入っている。

試したヘッドの数はおよそ30個。

 規則上、正常な使い方をして損傷したクラブはラウンド中であっても修理、交換することを認められている。ツアープロであれば、メーカーのスタッフがスペアを用意していることがほとんどだ。ただし、トップ選手の鋭敏な感覚の前では、壊れたものをただ交換すればいいというわけではない。

 クラブは作り手が機械であっても、製品になった際に微妙な“個体差”が出てしまうのが通例。プロの目はその違いを見極め、精神的にも問題を呼び覚ますことがある。

 日本オープン以降、小平は新しいドライバー探しに躍起になった。同社の別の製品も試したが、結局破損したものと同じモデルで、しっくりくるものを選び抜くことにした。

 新たに作られたヘッドの中から厳選し、小平がまず試し打ちしたのはおよそ30個。その中から5つ前後に絞り、さらに細かいテストを行った。「良いボールが出るけれど、構えた時にフェースが左を向いているような気がする」。「見た目は良いけれど、思い通りの弾道にならない」。テストを重ねるたびに生まれる小さな違和感。それを解消すべく、改良はさらに微細なものになった。

重心を0.5mm動かす、という作業。

 クラブ調整のポイントのひとつとして「重心」というものがある。ヘッドの内部で「重量がどの部分に、どれだけ配分されているか」で、ボールに加わる力が決まり、重心を変化させることで描く軌道が変わることがある。

 最近のドライバーはソール面に着脱式、可変式のウェートをつけるなど様々な工夫が施され、この重心(重量)調整が簡単になった。

 とはいえ、プロのカスタマイズはその上をいく。小平の場合はヘッドの中に「グルー」という粘着剤を注ぎ込み、内部で動かすことで、重心位置を0.5mmずつずらしながらトライ&エラーを続けた。

 ヘッドが割れてから1カ月後、小平はシーズン2勝目を挙げた。しかしその結果がクラブの信頼に直結したわけではない。勝ったけれど、何かが違う。ウェートでもない。グルーでもない。同月末、高知の試合会場。中村氏はソール部分にウェートを着脱するための“ネジの重さ”の違いに目をつけて、一定の好結果を得た。それでも調整は年が明けた今も継続中だ。

【次ページ】 330gのドライバーの1g以下の差を見破る。

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