オリンピックPRESSBACK NUMBER
37歳、苦労人アスリートの五輪道。
エアリアル田原直哉へ心から賛辞を。
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2018/02/21 07:00

平昌の凍てついた夜空に舞った田原の演技。その1本には、多くの支援者の気持ちがこもっていた。
日本でまたエアリアルの選手が生まれ……。
町全体で「エアリアルプロジェクト」を立ち上げ、ナショナルチームの活動拠点となっている北海道美深町から再びエアリアルの選手が出てくることがあればいい。
ジュニア時代に基礎を学んだ子供が、中学や高校を卒業するタイミングでエアリアルに興味を示してくれることがあればいい。
そんな期待を語りながら田原は、「こんな順位で何も言える立場じゃないですけどね。あー悔しい」とせつなげな、けれどもどこかさばさばした表情を浮かべた。
ADVERTISEMENT
体操ではかなわなかった夢を、25歳での競技転向という難しさや活動環境の厳しさを乗り越えてとうとうつかんだ苦労人へ、今送られるべきは賛辞以外にない。
さわやかに散った37歳は、最後まで名残惜しそうにジャンプ台を見つめていた。
気温マイナス8度の空気にほんのり暖かみがあった。
