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香川真司が、すべてを語った――。
W杯のこと、キャリアのこと、夢のこと。
posted2018/02/20 16:30
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Getty Images
香川真司がヨーロッパの地を踏んだのは今から8年前のことだ。
日本からやってきた21歳の青年は、2010年のサッカー界を驚かせた。
ドイツ人たちはその技巧に魅せられた。屈強なディフェンダーの隙間を、森の子ぎつねみたいにするすると抜けていく。なんだかすごい日本人がいるという話は国境を越え、英国にも、イタリアにも、もちろんスペインにも伝わった。
レアル・マドリーの監督だったジョゼ・モウリーニョにロンドンで会ったことがある。
「あのとき、私は本気で香川を獲得しにいったんだ」
そう打ち明けられたときは驚いたものだ。
ドルトムントの香川は、レアル・マドリーが、モウリーニョが、噂ではなく、本気で獲得に動くほどのインパクトを秘めていた。
それから香川はマンチェスター・ユナイテッドで英国のフットボールを肌で感じ、4年前に再びドルトムントに帰ってきた。欧州の地で経験を重ね、特に今季は非常に高いパフォーマンスで観客を沸かせている。
「同情してもらう気はないし、かっこつける気もない」
日本を離れて戦うことの意味を、今春29歳になる香川はこう語る。
「欧州で戦うというのは、相当に大変なことです。周りに日本人がいない環境で自分を表現していくのは想像以上に難しいこと。
同情してもらう気はないし、かっこつける気もない。でもこの環境にいることが、サッカーだけじゃなく、人としての自信にもなる。だからこそ成長できると感じます。
海外に挑戦するという気持ちは、サッカー選手を目指すならぜひ思っておいてほしい。これからの日本サッカー界を担う若い人たちは特に。世界は広いということを肌で感じてほしい」
頭にあるのは、まだまだヨーロッパで挑戦し続けていくという強い思いだ。
幸いなことに、というべきだろう。香川はキャリアで重傷とされるような大きな怪我や筋肉系の故障をしたことがない。
身に染み付いた、しなやかにいなすプレースタイルも故障の少なさに関係しているのかもしれない。