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内田篤人「ゲーム、楽しかったよ」
感情を無にした時期を乗り越えて。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byGetty Images

posted2018/02/16 17:00

内田篤人「ゲーム、楽しかったよ」感情を無にした時期を乗り越えて。<Number Web> photograph by Getty Images

内田篤人が楽しそうに、真剣にサッカーをしている。その姿がすでに尊いが、本人の目標はまだこんなものではないのだ。

「ユウマ、あいつはいい選手だよ」

 そんな内田の元に、長短のパスが集まった。

「(小笠原)満男さんもそうだけど、うちは裏へいいボールを蹴ることができる選手が多いので、タイミングよく走ればチャンスになるなと思っていた。ハーフタイムに言えば、後半には出てくるからね。やっぱり、俺は使われる選手だなって思った。まあ、ユウマ(鈴木優磨)は使っていくけど。あいつはいい選手だよ。目がいい。『点を獲らせてください』っていう目をしているから」

 GKの曽ケ端準以外、すべての選手と初めて一緒にピッチに立った内田だったが、組織の一員としての違和感はなかった。もちろん、改善の余地は残されているが、チームのスタイルに合致した「補強」という意味で、不安は感じられない。

 それでは、内田個人はどうか?

 ドイツ2部ウニオン・ベルリンで昨年秋に出場して以来となる実戦復帰。「思ったよりも全然できた。やっぱりタフさが違う、向こうとは」とその感触について語っている。

 サッカーのスタイルや選手のタイプなどの違いがあるため、アジアとドイツとを単純には比較できない。しかし、シーズン途中で加入したウニオンとシーズン前の準備段階から合流している鹿島とでは、現在のほうがチームメイトとの相互理解は深まっているだろう。それが現在の内田にとって、アドバンテージになっている。

90分間戦う姿が、なんとも感慨深い。

 90分間戦う内田の姿を見ていると、ドイツでの苦しかった時間は本当はなかったのではないかという錯覚に陥りそうになった(同時に、リハビリしかできなかった時期の彼の姿も思い出したりもしたけれど)。

「全然全然、こんな1試合終わっただけじゃ復帰なんて、言えないから。俺はまだ先、先。Jリーグも開幕していないし、多少筋肉系の怪我は、小さいものを含めてあると思う。そういうのを適当にごまかしながらやっていくんじゃないかな。

 でもある程度、どんどん良くなっているなっていう気はする。コンビネーションもそうだし、自分自身も。ゲーム体力、ボールタッチ、クサビを入れるパスだとか……、ある程度戻ってきている。もう少し上下動ができればいいんだけど。まあこれからも波は当然あると思う。

 でもここまでは悪くない。体力は後づけでついてくる。これだけ長く休んでいた人はいないと思うから、わからないと思うけど。これから長い間怪我をした人は俺を参考にしてほしい。後づけでついてくるから、我慢我慢」

 以前のインタビューで、「あとちょっとで復帰かと思ったら、また痛めてというのを繰り返すなかで、頑張ろうとも思わず、何も考えず、ただ機械的にやるべきことをやり続けるようになっていた」と話した内田。あらゆる感情を無にした日々だったのだろう。

 だから、ピッチに戻った彼が口にした「我慢」という言葉の意味がズシンと響いた。

【次ページ】 ロッカーでチームメイトにかけた一言。

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