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那須川天心、今度は神童キラー撃破。
“打倒ムエタイ”は死語になる!?

posted2018/02/17 08:00

 
那須川天心、今度は神童キラー撃破。“打倒ムエタイ”は死語になる!?<Number Web> photograph by Susumu Nagao

圧倒的な強さを見せる那須川(右)。今回はいつもと違う引き出しも見せた。

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Susumu Nagao

 これは大変なことになっている。あらためてそう感じたのは、バックステージで記者、関係者たちの会話を聞いた時だ。

「強かったねぇ、凄いね」

「相手があれだけ強いと、さすがに苦労させられるんだね」

 本当に大変なことだ。強いと驚かれていたのはムエタイのチャンピオンで、苦戦が意外に見えたのは日本人。しかも前者が負け、後者が勝っているのだ。

 2月12日、大田区総合体育館で開催されたキックボクシングイベント『KNOCK OUT』のメインは、もはや説明不要、昨年大晦日の活躍でさらに知名度を高めた“神童”那須川天心の試合だった。

“神童キラー”相手に苦しい闘いも。

 相手はムエタイの頂点に君臨するスアキム・シットソートーテーウ。スーパー・バンタム級でムエタイの殿堂ルンピニー・スタジアムのベルトを巻いた選手だが、現在は同じ階級に敵が見当たらず、賭けを成立させるために2階級上の王者と闘うこともある(しかも勝っている)。

 主催者がスアキムにつけたキャッチフレーズは“神童キラー”。那須川もスアキムをキャリア最強の相手と認め、「そろそろ那須川が負けてもいいんじゃないか」という雰囲気を感じたとも言う。

「今回は怖かった。負けるんじゃないかって自分でも考えましたし」

 確かにスアキムは強かった。那須川が想像していた以上だったようだ。「これは本物だな、と思いました」と那須川は振り返る。とりわけ強烈だったのがミドルキックで、同じ階級とは思えなかったそうだ。

 相手の蹴りを受け流して反撃につなげるのが得意な那須川だが、今回はしっかりカット(ブロック)しなければならず、その分だけ“待ち”の態勢になって攻撃のテンポが遅れてしまった。攻撃が当たっているのにスアキムが苦しそうな顔を見せず、どんどん攻めてくるのも不気味だった。

【次ページ】 長期戦で見えた基本レベルの高さ。

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