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那須川天心、今度は神童キラー撃破。
“打倒ムエタイ”は死語になる!? 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2018/02/17 08:00

那須川天心、今度は神童キラー撃破。“打倒ムエタイ”は死語になる!?<Number Web> photograph by Susumu Nagao

圧倒的な強さを見せる那須川(右)。今回はいつもと違う引き出しも見せた。

長期戦で見えた基本レベルの高さ。

「なかなかないことですけど、今回は出し切りました。本当に疲れた」

 しかし繰り返すが、彼は勝っているのだ。パンチのヒット数を見れば、3-0の判定勝利は文句なし。5ラウンドをフルに闘う長期戦になった分、那須川の強みを再確認することもできた。

 たとえば、疲労が出てくる終盤戦でもガードが下がらないこと。パンチを当てた後には、必ずコンビネーションで蹴りにつなげていた。キックボクシングの世界では「蹴って終われ」がセコンドの常套句だ。顔面のガードを意識した相手にはミドルキックやローキックが効くし、蹴りが効いてくれば顔面のガードが甘くなり、今度はパンチが当たりだす。

 他にも攻撃をヒットさせたら相手から離れる、蹴られたら必ず蹴り返すなど、この試合では那須川の“基本レベル”の高さが感じられた。これは、圧倒的なセンスと爆発力でKOする普段の試合ではなかなか伝わりにくい部分ではないか。

 しかもこの基本の徹底を、ムエタイのトップ選手相手に完遂したのである。終盤はスアキムの猛追をいなす展開で、ややディフェンシブに見える場面もあったが、本気のタイ人を相手に“守り切る”闘いができることがそもそも驚きだ。

テーマは“那須川を誰が倒すのか”に!

 那須川いわく「今までで一番嬉しい勝利」。それでもKOを逃したことを気にしてしまうし、勝因の1つとして「日本だった」ことも挙げている。もう「勝っただけで凄い」とは誰も思ってくれない。

 ただそれは、那須川自身が望んだ状況でもあるはずだ。試合前、彼は「日本代表としてムエタイにレベルの差を見せつけたい」と言った。

「日本では、ムエタイは超えられない壁だと思われてるけど、その壁を僕が壊せばみんなもできるようになると思う」

 念頭にあったのは100m走の“10秒の壁”だ。

「1人ができたら、みんなできるようになるって言うじゃないですか」

【次ページ】 「那須川は宝ですよ、キック界の」

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