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大坂なおみはなぜ世界で愛されるか。
個性が薄れる女子テニス界の異端。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2018/01/24 11:30
ハレプに完敗も、初のグランドスラム16強入りに、手応えを感じているようだった大坂。
人気者になる要素は、その独特の“なおみ節”。
「とってもうれしいけど、皆さんには申し訳ないです。だって、本当に彼女(バーティ)に勝ってほしかったと思うから」
ここに全てを再現はしないが、マーガレット・コート・アリーナを埋めたバーティ贔屓の観客に彼女の「憎めないキャラ」を次々と披露。
「おもしろいことを言うつもりは全然ないんだけど」とあとの記者会見では困った顔を見せたが、文字では表現しきれない「間」と声と表情が“なおみ節”の武器だ。
日本だけでなく「私はハイチも代表しているつもり」。
昨年の秋には、父親の故郷であるハイチを訪問し、20年も前に両親が建てたという学校で子供たちと触れ合った。
この若さでの国際的な社会活動も、これまでの日本のテニス界に見られなかったもの。前述のコートインタビューの一幕で、「日本人として戦うことは誇りに思う。でもお父さんはハイチ出身だから、私はハイチも代表しているつもり」と言ってピースサインを作った。
ルーツの1つであるハイチを実際に訪れた経験が、彼女をよりスケールの大きなプレーヤーに、そして見識ある女性にしたように思う。
「○○人ではなく、テニスプレーヤーと呼ばれたい」と言ったのは、確か彼女がまだ17歳の頃だった。テニスの成績は期待したペースよりスローではあるが、人として、大坂は志に着実に近づいているのではないだろうか。