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成功率100%で盗塁王獲得は可能か?
ロッテ荻野貴司が挑む究極の記録。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/01/18 17:00
通算153盗塁に対して、失敗は21回のみ。高い成功率を誇る荻野はその俊足をシーズン通じて発揮したいところ。
「凡打より、盗塁でアウトになる方が嫌だ」
そこで彼らに期待したいのは、前人未到の盗塁成功率100%である。
その規格外な数字を目標に掲げてシーズンに備えているのが「凡打になるより、盗塁でアウトになる方が嫌だ」と口にする荻野だ。
1985年生まれの荻野は今年で33歳を迎えるが、本人の足への意識はいまなお高い。
「ここ数年、年齢的なものもあって周りから足が遅くなったと言われるんですけど、僕の中では、そんな感じは全くしていないんですよね。むしろ、速くなっていると思っているくらい。全然、足は衰えていない」
彼の自信は、2017年シーズンの数字も証明している。昨シーズン、103試合に出場してキャリアハイに並ぶ26盗塁をマークした。
デビューイヤーから、荻野の足は衝撃的だった。
大学・社会人を経て2010年にプロ入りした荻野は、デビュー時から衝撃的なスピードを見せつけた。ケガで離脱するまで46試合25盗塁を記録し、失敗はわずか3。89.2%の成功率を誇ったのだ。
しかしこれまでの盗塁王のタイトルとは縁がなく、その俊足をポテンシャルほど発揮できていない。その背景には、ケガがある。ルーキーシーズンにひざを痛め、そこから彼の苦悩は続いた。
2011年にも同じ箇所を痛めて離脱し、2014年には左肩を骨折、2016年には二度の肉離れを起こして戦列を離れた。ケガだけではなく調子の上がらないシーズンもあり、2013年には102試合出場したものの、フルシーズンでパフォーマンスを発揮することはなかった。
負傷の繰り返しは、打撃技術にも影響した。荻野はこう振り返る。
「状態がよくなったと思ったら、すぐにケガをしてばかりだったので、習得した技術が積み重なっていかなかったんです。離脱するたびにイチからやり直しになって、技術がものにならなかった。だから、身体が疲れてくると手打ちになったりして、ボールを追いかけるようになって結果が出なかった」