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大谷翔平にワクワクするアメリカ。
二刀流は既存の価値観への挑戦だ。
posted2017/12/15 18:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
大谷翔平のメジャー挑戦は、メジャーリーグという社会全体を揺るがしている。
それは彼が「投打二刀流」という前例のないことをしようとしているからだ。日本プロ野球での成功は、メジャーリーグの現実に当てはまらない。簡単に言えば「日本のプロ野球では成し得たかもしれないが、メジャーリーグではそうはいかない」ということだ。
たとえばメジャーリーグのメディアはそんなことを百も承知で、「SHOHEI OHTANI」=大谷翔平の「メジャー挑戦」を毎日、話題にしてきた。
MLB所有のケーブル局MLBネットワークなどは今年、WBCイスラエル代表のエースとしてプレーし、2005年には投手として打率3割の成績を残したジェイソン・マーキー元投手や、(自著の出版に合わせたのだが)投手から打者に転向したリック・アンキール(ともに当時カージナルス)まで引っ張り出して「投打二刀流」について語らせた。
マーキーやアンキールは「どのように成立するかは分からないけど」と前置きしながらも、異口同音に「可能だと思うし、実現した時の自分たちがどう反応するのか興味深い」と言った。投打で活躍した彼らも自分たちが「投打二刀流」をしたという認識はないので、戸惑っていることを正直に告白したわけだ。
安い契約金、年俸での移籍には否定意見が多い。
2004年にレッドソックスの86年ぶりのワールドシリーズ優勝に貢献したケビン・ミラー(2001年の同時多発テロがなければ中日入りしていた)は「投打二刀流なんて、今の分業化されたメジャーリーグではどうやったら実現できるのか想像できない」と言ってはみたものの、実際に「可能なのか?」と念押しされると「(投打二刀流は)可能だとは思う」とため息混じりに漏らした。
契約については否定的な意見が多い。前回のコラムでも書いたように「25歳以下の契約金が日本円で最高4億円前後に抑制されるルール下でマイナー契約からのスタートになって、今後6年間はメジャー球団に安価で雇われることになる」というのが基本線になっている。
大谷本人や彼の代理人がその答えに直接答えない限り「2年待てばダルビッシュ級、いや田中級の大金が手にできるのに、なぜ今年なんだ?」という意見は入団会見が行われた今も消えていない。そういう人たちの多くは元現役選手や元球団フロントなどの関係者で、彼らは「ベースボールはビジネス」という立ち位置から「利益は少しでも多い方がいいに決まっている」と声を大にしている。