オリンピックへの道BACK NUMBER
女子52kg級に名乗りをあげた阿部詩。
一二三との兄妹東京五輪は射程圏内。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2017/12/16 07:00
世界ランキングを駆け上がっている阿部詩。兄の一二三に続いて5歳で柔道を始めた少女は、東京五輪を視野におさめている。
指導する松本監督も、阿部の進化に驚く。
直接対決となったのは準々決勝。世界チャンピオンを相手に、阿部は地力の高さを示した。相手の技の仕掛けに慌てることなく対処し、危なげない試合運びを見せる。そして志々目の内股に動ぜず、隅落としで技ありを奪って勝利。決勝では立川莉奈を相手に、試合開始46秒、内巻込みで一本勝ちをおさめた。
優勝という結果もさることながら、大会を通じて見せたのは、兄同様、担ぎ技を武器とする豪快な柔道だ。
「自分の柔道は一本を獲りに行く柔道です。担ぎ技にこだわっているつもりはあまりないですが、みんなが『わーっ』となってくれる勝ち方は担いで投げることかなと思っているので、そこはこだわっています」
加えて志々目との一戦が象徴するように、試合運びの安定感は、この1年での成長を物語る。松本監督も言う。
「安心して試合を見ることができます。それがすべて。見ていて負ける気がしない」
「志々目さんを投げるとか、世界にもいないと思います」
そしてこう続ける。
「教える立場の私にとっても、彼女がライバルです。ものすごい進化で強くなっている。それ以上のものを与えていかないといけませんから、私にとっては彼女がライバルなんです」
「17歳の女の子なので、メンタルが」
あえて課題をあげるとすれば、精神面だと言う。
「17歳の女の子なので、どこかでメンタルがくるったら、がたっと来るときはあるかもしれません。メンタルをどう持っていくかだけです」
今後、注目は一層大きくなっていくだろう。その中で、自分を保っていけるかどうかが鍵を握る。